389部分:第二十五話 花咲く命その五
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第二十五話 花咲く命その五
それは。これであった。
「ドイツ。この国において」
「このドイツで」
「ミュンヘンがですね」
「そうです。これまでドイツは」
王の愛する。そのドイツはというのだ。
「芸術ではフランスに遅れを取っていると思われていました」
「やはり。そうですね」
「ドイツよりフランスでした」
「そう思われていました」
「それが変わります」
王はそれを望んで話すのだった。
「そしてドイツは」
「ドイツは」
「この国は」
「芸術により統合されるのです」
そうなるとだ。王はその望みを見ていた。
「鉄と血だけではないのです」
「鉄と血」
「ビスマルク卿が言われているそれですが」
「軍隊と産業」
「その二つですね」
「それで統合したとしても」
王はわかっていた。その二つだけではドイツは統一されてもだ。それは長い間続かないと。一つにするものが足りないからだ。
そしてその一つにするものはだ。何かというとだった。
「それはすぐに消えてしまいます」
「ドイツを統一しても」
「それでもですか」
「弱いのですね」
「武力と産業は必要でしょう」
それは王も認める。とりわけ。
「産業はです」
「産業ですか」
「それは」
「国は豊かでなければなりません」
だからだというのだ。
「ですから」
「そしてその産業を成り立たせる」
「科学も」
「科学。人の未来を切り開いてくれるもの」
王はそれにも希望を見出していた。ただ王の見る科学は戦争の為の科学ではない。それが芸術の為の科学を見てのことであった。
そしてそれと共にだ。その科学は。
「人を豊かにもしてくれます。そう」
「そう?」
「そうとは」
「例えばアルプスを」
そのだ。アルプスはどうかというと。
「空から見ることもできるでしょう」
「空からといいますと」
「気球で」
「それを使って」
「いえ、気球ではなく」
それではないというのだ。王がここで言うのは。
「鉄の翼で」
「鉄の翼!?」
「それが空を飛ぶのですか」
「まさか」
「そうです。人がそれができるようになるでしょう」
王は見ていた。その未来を。
「考えるだけで素晴しいことではないでしょうか」
「あのアルプスを上から見るのですか」
「空から」
「アルプスは何処から見ても美しいもの」
王はアルプスも愛していた。その大自然を。
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