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永遠の謎
388部分:第二十五話 花咲く命その四

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第二十五話 花咲く命その四

「そう考えています」
「左様ですか。陛下は」
「彼等と会われますか」
「そのうえで」
「彼等から直接話を聞きます」
 王は既にどう言うのか決めていた。だがあえてそうするというのである。
「そうしますので」
「陛下御自身がですか」
「そうされるというのですか」
「あえて」
「そうです。ですから」
 また言う王だった。
「私はまた言いましょう」
「あの方々の潔白を」
「それを」
「そもそも。何と下らないことでしょう」
 こんなことも言う王だった。
「芸術の前には。醜聞は」
「取るに足らないもの」
「そうだと」
「そうです。芸術を無闇に汚す醜いものです」
 王は顔を曇らせる。ここでもだった。
「その様なもの。そして」
「そして?」
「そしてといいますと」
「それが何を生み出すか」 
 そのことも言葉に出した。醜聞が何を生み出すのか。
「何も生み出しません」
「醜いものはですか」
「左様ですか」
「そうです。必要なのは芸術」
 あくまでそれだというのだ。
「それだけです」
「それでは陛下」
「そのワーグナー氏ですが」
 ワーグナーのことについてだ。別の話になった。
「あの方が歌劇場を築かれるそうですが」
「その場所は」
「ミュンヘンであるべきです」
 王はそこだと言った。他ならぬ王の国の都、今ここにいる町だ。
「ここであるべきなのです」
「しかしワーグナー氏はどうも」
「バイエルン各国を歩いておられるようですが」
「そして然るべき場所を探しておられます」
「そうしておられますが」
「いえ、それでもです」
 それでもだと。王は言い切ろうとする。願望を。
「ミュンヘンです」
「この町ですね」
「それはミュンヘンにあるべきですね」
「この町に」
「はい、そうです」
 まさにすだとだ。王はまた言った。
「この町でなければなりません」
「ではワーグナー氏に」
「そのこともお話されますか」
「ミュンヘン、この町に」
 そのだ。この町にだというのだ。
「歌劇場、彼の歌劇場も置きます」
「既にある王立の歌劇場と共に」
「それもですね」
「ミュンヘンは芸術の都になるのです」 
 まさにそうなると。王はその望みを見ていた。
 そしてその芸術とは何か。芸術といっても様々だ。

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