87話:婿探し
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の他人がいる。どちらか選ばなければならないとしたら、どちらを選ぶだろうか?」
ミューゼル卿とキルヒアイス大尉は悩む様子だったが、意を決したように
「為政者や指揮官という立場であれば、本来、自分との関係性で判断してはならないと思いますが、そう言う状況になれば自分と親しいものにパンを与えると思います」
「私も、そうしてしまうと存じます」
「同じようなことが起きているのだと思うよ?ましてや自分を為政者に選んでくれた人たちを無視して、自分を選ばなかった人々にパンを与えるような事をすれば、次は選ばれない可能性もある。そう考えれば、停滞期や衰退期には人口の多い首都星に富は集まるだろうし、開発が必要な星域は無視されるだろうね。あくまで想像だが......」
なんとなくだが、二人も納得できたようだ。少しでも彼らの任務の役に立てばよいが......。
「それにしても、このようなことを汚職を大々的にしている人間の一門が言うべきではないのかもしれないがね。これは愚痴だが......」
「伯にこのようなことをお話して良いのかは存じませんが、ヒルデガルド様は座学の場でかなり励まれておられました。『領地経営のお手伝いをするのだ』とおっしゃっておられましたが、ある時期から『領民の為になる施策が出来ない』とお嘆きのご様子でした。無学な私でも、伯の見識が素晴らしいと伝わって参りました。何かご事情があるのでしょうか?」
キルヒアイス大尉が、言うか迷ったそぶりをしてから率直に尋ねてきた。誠実で、優しい男だ。本当に彼の周囲には人材が揃っている。
「RC社の施策を真似れば、領地が発展する事は分かっていた。だが、マリーンドルフ伯爵家の後継者はヒルダだけだ。もし領地が発展するような事があれば、誰にとは言えぬが財産目当ての工作を受けることになるだろう。実際、私の甥のキュンメル男爵は財産を横領されかけたのだ。
そんな人間が一門の当主である以上、常に工作を受ける危険がある。ろくでもない男をヒルダに押し付けて、財産を奪われるような危険があるなら、現状維持を選ぶしかなかったというのが実情だな。このことは内密にしてほしい。自分が女だからなどと変な負い目を負わせたくないのでな」
「出過ぎた真似をいたしました。お許しいただければ幸いに存じます」
「気にしてはいない。私を思っての事だと理解している。話を戻すと、あとは若い人間にも話を聞いてみてはどうだろう?この歳になると、思考が固まってしまうからね。たしか、フレデリック殿の演奏会が催されるはずだ。ヒルダも招待されているし、マグダレーナ嬢も参加されるだろう。アルブレヒト殿もご参加されるやもしれぬし、近い世代で色々と話しあってみるのも、良ききっかけになるやもしれぬな」
「ラインハルト様、確かに皆さまにご
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