383部分:第二十四話 私の誠意その二十一
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第二十四話 私の誠意その二十一
「それができるかどうかは」
「それはわからない」
「むしろ」
「悲しい結末は。ローエングリンのものです」
ここでもだ。ローエングリンの話になった。
「あの方は。その中におられることを望まれています」
「悲劇の中にですか」
「その中に」
「幻想。白銀の幻想」
皇后はローエングリンをそれだとする。
「それはこの世には完全には表われないものですが」
「しかしその幻想をですか」
「あの方はあまりにも愛され」
「そしてそのうえで」
「神は。残酷なものでしょうか」
今度はだ。神について思う皇后だった。
「あの方にそうしたものを見せられ導かれています」
「そしてあの方が辿り着かれるのは」
「何処なのでしょうか」
「あの方は王です」
王を王たらしめているだ。その最も重要なことだった。
「今も王でありこれからも」
「これからも」
「これからもですか」
「王であられます」
周りの者達も言う。
「そういえば弟殿下のオットー様は」
「残念なことに」
「彼は。王にはなれません」
皇后から見てもだ。オットーはそうだった。
「彼の心はもう」
「戻りませんか」
「二度と」
「はい、それはありません」
そうだとだ。皇后はここでも悲しい顔で話す。
「王位継承者が。それでは」
「あの方は王でなければならない」
「何があろうとも」
「そうです。しかしそれ以外にもです」
まだだ。王が王であり続ける根拠があるというのだ。
「あの方はです」
「まだですか」
「その根拠がおありですか」
「この世で王であられ」
そしてだというのだ。
「そしてあちらの世でもです」
「あちらの?」
「あちらのといいますと」
「まさかそれは」
「神の」
「そうです。主の世界のです」
キリスト、皇后は今その主を見ていた。十字架にかけられ微笑んでいる主、彼も見てそのうえで周りに話をするのだった。
「その世界の王になられるのです」
「あの世界の王ですか」
「あくまで王なのですね」
「その存在になられるのですね」
「その通りです。そしてその玉座は」
王は玉座に座るものだ。ではその玉座は。
「モンサルヴァートにあります」
「そのローエングリンのいたですか」
「そこにおいてなのですか」
「あの方は王になられる」
「そう仰るのですか」
「そうです。この世において王であられ」
そしてだった。その後で。
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