第56話 リシャール大佐との決戦
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英雄は去ってしまったのだ。奇跡というのはカシウスさんのような女神に愛された英雄しか起こせない」
「……」
「だから私は情報部を作った、そしてリベールに絶対的な力を得られる手段を探した。そして見つけたのが……」
「輝く環……ってことね」
リシャール大佐がクーデターを起こそうとしたのは、いずれ現れるかもしれない脅威に対抗するために力を求めたからだったのね。
「エステル君、君も戦争で大切な人を失ったからこそ分かるはずだ。あのような惨劇は二度と起こしてはならないと」
「それは……」
「私達は協力し合えるはずだ、共にこの国を守る為に力を貸してほしい」
リシャール大佐はあたしに手を差し伸べてそう言ってきた、あたしはその手がとても魅力的に思えてしまう。
「エステル!?」
「おい、こんな奴の話に騙されるな!」
皆があたしを止めようとするが、私は前に出てリシャール大佐の前に立つ。
「ふふ、それでいいんだ」
「……」
思わずリシャール大佐の手を取ってしまいそうになるあたし、でも不意に母さんを失った時に家で一人泣いていた父さんを思い出した。
そしてあたしはリシャール大佐の考えは国を想う者としては正しいのかもしれないが、あたしにとっては違うんじゃないのかって思い首を横に振るう。
「ごめんなさい、せっかくのお誘いに悪いんだけど断らせてもらうわ」
「どうしてだ?君とてこの国を愛する者の一人だろう、ならば私の考えに共感できるはずだ」
「リシャール大佐は父さんを英雄だって言ったわよね?」
「ああ、彼は間違いなく歴史に名を残す人物だ」
「リシャール大佐や他の人からすれば父さんは英雄なんでしょうね、でもあたしからすれば父さんは唯の父さんなのよ。フラッと何も言わずにどこかへ行っちゃうと思ったらこっちが驚くような事をしてくるわ、連れてくるわで困っちゃうし意外とズボラなところもあるし好き嫌いもする。そして母さんを失って一人で悲しんでいた……唯の人間よ」
父さんが凄い人なのはあたしも理解できるわ、でもそんな英雄だって弱い所はあるのよ。
「父さんは言っていたわ。俺一人の力などたかが知れているって、この国を守れたのは頼りになる仲間がいたからだって。それはきっとあなたの事も含まれているんだと思う」
「……何が言いたいんだ?」
「要するに父さんは一人で戦っていたんじゃない、皆で力を合わせて困難を乗り越えたのよ」
あたしも遊撃士になって色んな人を助けてきた、でもそんなあたしも沢山の人に助けられてきた。ヨシュアやシェラ姉、オリビエにアガット、クローゼにティータ、ジンさんやアネラスさん達遊撃士の皆、そして各地方の市長さん達や王国軍の人々……沢山の人に導かれてここにた
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