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ツインズシーエム/Twins:CM 〜双子の物語〜
ツインレゾナンス
エピローグ 変わり得た明日の一ページ
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 だからこそ、屈託のない笑顔で即答するフローラの姿に、エースは恥ずかしくなって少しだけ顔を背けた。

 ここまで純粋な好意を面と向かって向けられて、恥ずかしくならないわけがない。相手は色んな人が手を出せずにいる高嶺の花のような存在なのだから、エースは余計にそう思った。

 彼女の方が、もっと前を向いている。自分よりも、ずっと真っすぐ前を見ている。

「あ、そういえば……今ってここには2人だけなんだよね?」

「ああ、多分そうだけど」

「じゃあ、人目を気にする必要もないんだよね」

「それは、まぁそうだけど」

「なら、エースくんって、呼んでもいいんだよね」

 このセリフを聞いた瞬間、エースの中で一気に熱いものがこみあげた。



 このようなことを言うとフローラに怒られるかもしれないので、エースはきっとこれからも言わないだろう。

 エースも始め、同じクラスになった時からフローラのことが気になっていたのは本当のことなのだが、その理由は母親の声に似ているから、ということだった。ぼんやりしている時に始めて聞き間違え、反応した先に彼女がいた。森で迷う彼女と始めての会話を交わしたのは、その日の放課後の話であり、本当に交流と呼べるようなものはそこから始まった。

 そこから月日を重ねていくにつれて、付き合いも多くなり、彼女の色々な面を知った。そうしているうちにエースは、母親似の声を持つ少女としてではなく、フローラ・スプリンコートとして好きになっていたのだった。

 好きという想いが強くなると同時に、自分の置かれた立場との葛藤も強くなった。自分は双子であり、そんな自分との関係が作られてしまえば、きっと迷惑を被ってしまう、と。その先にある未来も考えると、自分の気持ちを素直に言い出せなかった。

 正直なことを言うと、エースは今も、この恐怖を克服したわけではない。きっとこれからもついてくるものだ。ずっと付きまとうものだ。これからは想像もしなかった恐怖や不安に苛まれることもあるのだろう。それでも、自分の居場所だけはきっちりと守りたいと思った。これまでだけでなく、これからも。

 だからこそ、彼女の口から発せられた自分の名前に、エースは静かに涙を流した。それは懐かしい響きを持つ、包み込むような声色の音。限りなく似ていて、しかし絶対に違うもの。

「えっと、だい……じょうぶ?」

「あ、ああ。ごめん。大丈夫。フローラの気にすることじゃない」

 みっともないところを見せてしまったな、と思う。同時に、何も言わずにそっとしておいてくれるフローラの優しさが身に染みる。

「ふふっ」

「なんだよ、急に笑って」

 突然笑顔になるフローラの姿に、目元を拭いながらエースが疑問をぶつける。自然な笑顔も絵に
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