85話:蠢動
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しろ野放しにしたせいで見境が無くなっておるようじゃ」
リヒテンラーデ候がため息をつかれる。地球教摘発の為の健康診断と言う名目での薬物検査が大混乱の引き金となってまもなく6年。軍部系貴族とブラウンシュヴァイク公爵家・リッテンハイム侯爵家が全面的に協力する以上、例外は認められなかった。そして皇族弑逆という大逆罪に関わる調査の為、通常なら内々に処理されるような案件も手心が加えられることは無かった。
結果として多くの政府・宮廷系貴族の醜聞が明らかになり、混乱は治まったものの次代の尚書候補たちが何かしらの形で巻き込まれた。将来の内務尚書候補だったハルテンベルク伯など、『婚約者を内密に弑されたこと』を逆恨みした妹君に階段から突き落とされ、お亡くなりになられた。本来なら次代の育成を進めるべき所だがそちらは一切手が付けられていない。
「次代の育成にやっと時間をさけるという時期に、皇太子殿下がご崩御されたとなると、またしばらくは混乱が続きましょう。軍部でもあのご両家でも構いませぬ。人材をもらい受けねば将来的には困ったことになりそうですが......」
「承知しておるが、今は動けぬ。少なくとも立太孫が行われぬうちは動けぬのだ。陛下もすでに老齢に入られておる。男系を優先するなら候補者は一人に絞られる。だが母親が下級貴族で年齢も幼い。あの両家からすれば、男系であるだけで下級貴族から生まれた者を至尊の座に据えるとなれば、何かと物言いもあろう。既に立太孫式を行わせぬように蠢動している輩もおるようじゃし、年齢はあちらが上じゃ」
至尊の座はルドルフ大帝以来、男性が継承してきた。女帝の先例は無いが、言われてみればあの両家が素直にその座を諦めるとは思えぬ。そう言う意味では軍部も皇女ではあるが担ぐ対象を持っていることになる。彼らはどう動くのだろうか?
「候、軍部はどう動きましょうか?少なくとも彼らも両家の候補より年少になりますが、候補者を抱えていると存じます。それに地球教の事ではあの両家と協力体制を取りましたが......」
「そこは大丈夫であろう。あの両家に軍部が協力したとして、軍部に何かメリットが生まれると思う?むしろ幼帝を担いで軍部に浸透しようとするのがオチじゃ。第二次ティアマト会戦の後の事を、彼らは忘れてはおるまい。政府がなにかしかけぬ限りは、動くことは無いはずじゃ。むしろあの強欲の矛先が軍部に向くことが無いようにだけ気を付けてくれれば何とかなろう......」
リヒテンラーデ候は苦々し気がご様子だ。私も候に及ばぬなりになんとか混乱を治めるために苦労してきた。そんな苦労は知らんとばかりに、汚職を重ねるカストロプ公にはうんざりしている。
「候、そうなりますと人材をどちらからも借りる事が出来なくなります。せめてフォルゲン伯なりマリーンドルフ伯
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