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永遠の謎
378部分:第二十四話 私の誠意その十六

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第二十四話 私の誠意その十六

「ああなると思っていました」
「ああなるとですか」
「そうだというのですか」
「はい、バイエルン王は女性とは結婚できない方なのです」 
 そうだとだ。皇后は遠くを見る目で話すのだった。
「決して」
「決して?」
「結婚できない方なのですか」
「何故ローエングリンを愛するのか」
 ここでもだった。この騎士の名前が出た。
「それを考えると」
「ゾフィー様とはまさか」
「このまま」
「覚悟しています」
 ゾフィーの姉、そして王の従姉としての言葉だった。
「このこともです」
「左様ですか」
「そうなのですか」
「はい、しかしそうなれば」
 最悪の事態になればどうなのか。皇后はその際立った美貌を強張らせ。こう言うのだった。
「私はあの方を暫くは」
「暫くは?」
「暫くはといいますと」
「許せないでしょう」
 そうなるというのだ。それは何故かというと。
「私はゾフィーの姉なのですから」
「だからですか」
「そうだからこそですか」
「はい、そうです」
 まさにそこにだ。皇后の覚悟があった。
「ですから。暫くの間は」
「そうなればですか」
「バイエルン王を」
「しかし私はやがては」
 それでもだというのだ。許せなくなろうとも。
「やがて時が来ればです」
「許されるのですね」8
「そうされますか」
「間違いなくそうします」
 自分でもわかっているというのだ。そのことは。
「必ずです」
「そうですか。必ずですか」
「あの方を許されますか」
「私にとってあの方は」
 バイエルン王は何か。そういう話だった。
「もう一人の自分なのですから」
「もう一人のですか」
「皇后様御自身なのですか」
「はい、そうです」
 まさにそうだというのだ。皇后にとって。
「私にとってはそうした方です」
「だからこそですか」
「皇后様はバイエルン王を許される」
「そうされるのですね」
「その通りです。私は鴎で」
 自分自身はそれだとして。王は。
「あの方は鷲なのです」
「バイエルン王は鷲ですか」
「そうなのですか」
「そうなのです。鷲なのです」
 まさにそうだというのだ。バイエルン王は鷲だというのだ。
「あの方はそうなのです」
「ですか。鴎と鷲」
「そうなっているのですか」
「だからこそ。最後には許すでしょう」
 そうなるとだ。自分でも語る皇后だった。

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