小木曽雪菜という少女
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鈴科がこの場から何の断りも無く食卓を去ったのは意外としょうもない理由である。
ぶっ続けで彼女のヒトカラに付き合わされた疲労であったりする。
そんな事情を理解している彼女の家族は年頃の学生生活を送っている娘の成長に内心喜んでいた。
◇◇◇
この世界は自分にとって酷く薄っぺらなモノに見えていた。
一を聞いて十を知る。
正に天賦の才、人はそれを天才と呼ぶ。
他者の追従を許さない絶対的な頭脳、それを遣いこなす精神力
だが、それは酷く残酷で、一人の理解者も存在しないことを意味していた。
世界に色は無く、人はヒトでしかない。
瞳に色は無く、人生とは実に詰まらないモノだ。
"鈴科百合子"という少年にとって世界は空虚そのものであった。
今でも夢を見る。
当時の色褪せた過去の記憶を
聡明であるが故に、誰にも助けを求めることもなく、傍観することが出来た。
余りにも聡明であったが故に、孤独で、孤高であった。
それに不満を感じたことも、後悔したこともない。
ただ、あの日々は空虚で、何も満たされない日々であった。
鈴科百合子君、よく頑張りましたね、今回も満点ですよ
満足気な教師の声と共にテストが返却される。
全ての科目が満点だ。
自分は無感動にそれを受け取る。
チッ、またあいつかよ
ちょっと頭が良いからって調子乗んじゃねえよ
満点だからってお高くとまりやがって
くっだらねェ……
毎回、満点を取ることに何の問題があるというのだ。
むしろこの程度のレベルの問題が分からないオマエらが理解出来ない。
周囲の妬みと罵倒の声を無視し、テストを受け取り、席へと戻る。
何度も見慣れた光景だ。
他人を妬み、共通の敵を作らなければ生きられないのか、全くもって反吐が出る。
翌日、下駄箱に濡れた雑巾が乱雑に押し込められていた。
当然、内履きは履ける状態ではない。
恐らく普段から自分に妬みを抱いている三下共の仕業だろう。
足りない頭を遣った結果がこれかよ、三下の考えそうなことだなァ
特に焦ることなく新たな内履きを手提げ袋から取り出し、その日は授業を受けた。
次の日も濡れた雑巾が下駄箱に放り込まれていた。
何度も芸の無い三下共だ。
教師に報告するようなことはしない。
仮に報告したところで自分の名前と共に犯人が吊るしあげられる可能性が高いと予測しているからだ。
数週間後には雑巾が画鋲に変わった。
その時から下駄箱に内履きを入れずに持ち帰ることにした。
机に落書きが
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