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永遠の謎
375部分:第二十四話 私の誠意その十三

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第二十四話 私の誠意その十三

「今からです」
「ローエングリンをか」
「それを聴かれてはどうでしょうか」
 ローエングリンのだ。その音楽をだというのだ。
「そうされてはどうでしょうか」
「そうだな。そうするか」
「ではどの音楽にされますか」
「第二幕から」
 そこからだと。王は言った。
「聖堂への合唱を」
「あの曲をですか」
「ビューローはいるな」
 彼を呼ぶのだった。ワーグナーの弟子であり現在もコジマの夫ということになっている彼をだ。
「彼を呼んでくれ」
「わかりました。それでは」
「しかしその音楽ですか」
「そうだ。そこに何かあるのか」
「宜しいかと」
 微笑んでだ。王に述べるのだった。
「あの曲はエルザの幸せを祝福する曲ですから」
「だからか」
「陛下と。ゾフィー様を」
 まさにだ。その彼女とだというのだ。
「祝福する曲ですから」
「そうなるな。彼女はエルザだ」
「そして陛下は」
「ローエングリン。その筈だから」
 それでだとだ。王に話すのだ。その話を聞いてだ。
 王も納得してだ。そのうえでだ。
 王はビューローを呼び彼にピアノでその曲を演奏してもらう。そうしたのだ。
 だが音楽が終わってからだ。王はそのビューローに対して言うのだった。
「貴方は近頃」
「近頃?」
「心が離れていませんか」
 こうだ。演奏したビューローに対して言うのである。
「ワーグナーの芸術から」
「いえ、それは」
 ビューローは気まずい顔で王に返した。一応は否定だった。
「ありません。私のマイスターはです」
「ワーグナーだけですね」
「そうです。そのことは御安心下さい」
「だといいのですが」
「それでなのですが」
 ビューローは話を誤魔化す様に自分から言ってきた。表情は何処か必死である。やはり何かを隠す様にだ。王に言うのである。
「日が近付いていますが」
「あのことですか」
「はい、御婚礼です」
 彼もだ。このことを王に話すのである。
「そのことですが」
「その音楽はです」
「婚礼の際のですね」
「それは貴方にお任せします」
 そのだ。ビューローにだというのだ。
「そうさせてもらいます」
「有り難き幸せ。それでは」
「受けてくれますか」
「そのことについてです」
 ここでまた、だった。ビューローの顔が曇った。王はその曇りを見逃さなかった。
 だがそれでもだ。王はそのことについてあえて言わずにだ。ビューローの言葉を表情を変えないまま聞いていくのだった。
「マイスターとお話しますので」
「ミュンヘンで」
「あの作品は受け取られたでしょうか」
「はい」
 王の表情が明るくなった。そのうえでの言葉だった。

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