第十一話 預言者現る!
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帝国暦487年 9月 1日 オーディン 憲兵本部 ギュンター・キスリング
エーリッヒの官舎から憲兵本部に戻ると一人の男が出迎えてくれた。情報部のシュミードリン少佐だった。
「少佐にとっては此処は居心地が悪いんじゃないかな?」
「情報部でも居心地が悪いのは変わりは有りません。失態を犯したばかりですから」
苦笑している。
「ヘルドリング中将に叱責されたか」
「ええ、大佐は如何です?」
「軍務尚書閣下に叱責されたよ」
少佐が“それはそれは”と言う。自分よりも酷い立場の人間が居ると知って少しは気が楽になっただろう。
三階にある小さな部屋に案内した。小さな机があり、椅子が二つある。
「取調べですね」
「不満かな? 余人に聞かれたくない話が有ると思ったのでね。違ったかな?」
「いえ、違いません。でもちょっと此処は……」
苦笑している。取り調べのような感じで不満か。
「この部屋でヴァレンシュタイン中将から話を聞いた。それがサイオキシン麻薬の摘発になった」
「本当ですか」
少佐が部屋を見回している。憲兵隊では有名な話だ。この小さな部屋があの大事件摘発を引き起こしたのだ。今思えばあの頃からエーリッヒは人騒がせな男だった。
「それで、何の用かな、少佐」
「大佐と中将の間でどのような会話が成されたのか、その内容を知りたいのです」
「ヘルドリング中将かな?」
「ええ、大分気にしています。まあ話しても差し支えない範囲で構いません。後はこちらで肉付けします」
思わず苦笑が漏れた。ヘルドリング中将には適当に報告して宥めるから材料を寄越せという事か。
「隠す事など無いさ、説教をしていただけだ」
「大佐が中将を?」
少佐が可笑しそうな表情をした。
「ああ、……かなり拙いな。何も分かっていない」
「……」
「士官学校校長になり切っている」
少佐が生真面目な表情で頷いた。
「その事は小官も気になっていました」
「万一の場合は国内治安維持の責任者になると言っても首を傾げる始末だ」
「まさか」
「そのまさかだ。ミュッケンベルガー元帥が居るから自分は必要とされないと思っていた」
「そんな事は有り得ません」
少佐が首を横に振った。その通りだ、有り得ない。
「その有り得ない事が有ると考えているんだ」
「……あれ程の人がですか? 冗談でしょう。状況判断能力、危機察知能力、事に及んでも対処能力は帝国でも屈指、いや第一人者でしょう。あの人を越える人が居るとは思えません」
「俺もそう思う。だがな、昔から自分に関しては不自然な程に評価が低かった。謙遜かと思ったがそうじゃない。その事に違和感を感じた事が何度も有る」
「今回もそれだと?」
思わず顔を顰めてしまった。
「今回は酷過ぎるな。士
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