第十一話 預言者現る!
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「俺は今の話を誰にもした事は無い」
「小官もしないでしょう」
少佐が立ち上がった。足元が心許ない。頑張れよ、卿もこれであいつと付き合う苦労が少しは分かるだろう。
帝国暦487年 9月 15日 オーディン 士官学校 ミヒャエル・ニヒェルマン
午前中最後の授業は兵站の授業だ。いつもは詰まらない、早くお昼が食べたいと思うんだけど今日は別だ。何と言っても今日教えてくれるのはヴァレンシュタイン校長閣下なんだから。
「反乱軍との戦いに勝つにはその本拠地に攻め込み降伏させる必要が有ります。では反乱軍の本拠地が何処に有るか、知っている人は?」
殆どの生徒が手を上げた。勿論僕もだ。
校長閣下が真ん中あたりに坐っている生徒を指名した。ウールマンだ。良いなあ。
「惑星ハイネセンです」
「その通り、惑星ハイネセンです。正確にはバーラト星系第四惑星ハイネセンという事になります。このバーラト星系は反乱軍の勢力範囲の中でも奥まった所にあります。つまり帝国からはもっとも遠い所にある」
うん、そうなんだ。僕も星系図で確認したけど凄く遠い所にある。ちょっと驚いた。
「一方帝都オーディンですがこちらもヴァルハラ星系は帝国の奥にある。オーディンとハイネセンはそれぞれ帝国、反乱軍の端と端に有ると言えます。非常に離れているのです」
オーディンからイゼルローン要塞まで四十日くらい、イゼルローン要塞からハイネセンまで三十日くらいかな。移動だけで二ヶ月以上かかる事になる。往復すると半年弱だ。
「人類が地球に住んでいた頃から距離が広がれば広がるほど敵を制圧し難くなるというのは軍事上の常識でした。これは人類が宇宙空間に出てからも変わりません。距離が広がれば侵攻時の兵站の維持や通信の維持、将兵の士気の維持が非常に難しくなるのです。それは軍の規模が大きくなればなるほど難しくなります」
うーん、そうなんだ。
「反乱軍も当然この事は知っています。帝国軍が大軍を以って本拠地を突こうとすれば補給線の分断を図るでしょう。帝国軍が反乱軍の奥深くに入ろうとすればするほど補給、通信は不安定になる。当然将兵は前に進む事を躊躇う事になります。それを解消しようとすれば帝国は遠征を支える膨大な物資、補給線を維持するための膨大な兵力、それを運用し連絡網を維持するための膨大な人員が必要になるのです」
なるほどなあ。あ、ハルトマン、エッティンガーが頷いている。
「かつて晴眼帝と尊称されたマクシミリアン・ヨーゼフ二世陛下に仕えたミュンツァー司法尚書がこの事を『距離の暴虐』と唱えマクシミリアン・ヨーゼフ二世陛下に軍事行動の不可を訴えました。当時の帝国は国内が非常に混乱しそのような外征を行えるような余裕は無いと訴えたのです。晴眼帝はミュンツァー司法尚書の意見を至当で
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