83話:義眼陥落
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
宇宙歴792年 帝国歴483年 3月上旬
首都星オーディン リューデリッツ邸
パウル・フォン・オーベルシュタイン
「時間を作ってもらってすまないね。まあかけてくれ」
イゼルローン回廊の向こう側で、叛乱軍の動きが活発化したため、本来なら年末年始にお戻りになられる予定だったリューデリッツ伯が久々にお屋敷に戻られた。その翌日、事前に内密に相談がしたいと打診を受けていたので、予め決めていた時間に伯の執務室にむかった。ご嫡男アルブレヒト様の婚約者の素行調査か確認できているし、ご次男フレデリック様とマグダレーナ嬢の件は、さすがに私が口出しする案件ではない。フリーダ様とのご縁談はお断りされているとの事だし、何か急ぎの案件でもあるのだろうか?伯みずからお茶を入れて下さり、良い香りが執務室に漂う。
「それで伯、相談事とはどのようなことでしょうか?今の所、伯から急ぎでご相談いただくようなことは心当たりがないのですが......」
「うむ。大きくは2点ある。一点目は、私の被後見人たちの事だ。もう一年、私の手元で実務をさせれば、軍と言う組織の中での働き方は十分身につくだろう。その後の事だが、情報部で情報収集とその分析。憲兵隊で証拠固めと検挙までを経験させたいと考えている。早くて18歳、遅くとも20歳でメルカッツ提督の艦隊司令部に参謀として配属したいと考えているが、2年で昇進させるだけの功績を立てさせることは可能なのだろうか?」
「そうですね。あの両名なら何とかなると存じます。ケスラー大佐も来期から准将に昇進しますし、ひととおり検挙まで経験させる手配なら問題なく対応されると存じます。私の分室は、情報部の中でも前線総司令部基地司令部専任のようなところがありますから、短期で異動させても特に問題は無いかと」
「そうか。ならこのキャリアプランを想定しておこう。卿に確認できて助かった」
伯のお力添えもあり、私もいつも間にやら少将だ。特に艦隊司令に興味は無いし、預かる分室の人員が増える一方なこと以外は、すべきことに変化もない。そろそろ退役してRC社へ入社したいところだが、准将になったシェーンコップ卿も、伯が前線総司令部基地司令の間は、現役でお支えするつもりのようだ。それを知って私だけがRC社に入社するわけにもいかない。情報部の任務は私の適性にもあっているし、ここで伯のお役に立つのが、今できる恩返しだろう。
「それと、もう一つの相談なのだが、フリーダの事なのだ。伯爵家ともなれば婚姻は政略を含むものにならざるを得ない。ところがな、既に心に決めたものがいるらしいのだ。貴族社会で恋愛結婚などなかなか認められるものではないが、話を聞くとな政略的な面でも十分に意味があるようなのだ。それに私も、嫁に出すなら彼にしたいと考えていた人物だ。卿はどう思う?」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ