第六章
第67話 再面談
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失せたな」
犬の姿をした神は、突き放すようにそう言った。
感謝。
その感情が一番近いだろうか。
今聞いたことを知らないまますべての終わりを迎えていたら――。
そう考えると、背筋が寒くなる。
自分には達成感に浸ってこの世を去る資格などなかった。
それを教えてくれたことが、ありがたい。
そう思った。
そしてこの神にはもう一つ、聞かなければならないことがある、とも。
「おれはもう帰るわ。じゃあな。このまま手続きどおり死ね」
「あの、ちょっと待ってください」
「ん?」
「クロは……クロ自身が死んだという事実に気づいてたんでしょうか」
「気づいてはねえだろうな。おれもあえて教えてない。生きていると思わないと何やるにも無理だろ。それに、お前も死んでいるということを察知されるかもしれないしな。そうしたらたぶんあいつ発狂してたぜ」
「……。わかりました。ありがとうございます」
「はいはい。じゃあな」
犬の姿をした神がフェードアウトする。
……。
ふたたび目の前に人の神が現れるまで、少し時間がかかった。
「大丈夫だったか? 彼は口が悪いので、会わせるのが少し心配ではあったが」
「大丈夫です。確かに口だけは悪かったですけど……」
「……?」
「俺が大バカだったということを、丁寧に教えてくれました。最後の最後で知ることができてよかったです。感謝してます。会わせてくれてありがとうございました」
神がその内容について聞いてくることはなかった。
ただ、少しだけ目を細めたように見えた。
「あの。お願い、決まりましたので」
「そうか。では聞こうか」
「クロを生き返らせてください」
「……!」
神の表情が一変した。
もちろん人間に比べれば、ずっと無表情ではあるのだろう。
だが、この神がここまで驚いた顔を見せたことは、今までなかったように思った。
「なんと……」
「それなら、俺本人が生き返るわけでも、世界のバランスが崩れるわけでもないですよね。お願いします」
「そういうことか。屁理屈な気がしないでもないが」
「俺は真剣です。お願いします。このとおりです」
膝と頭は、自然に落ちていた。
土下座して、懇願した。
「ふむ。即答できないので確認してくるが。もしできないということになったら?」
「いえ、絶対にお願いします」
「……わかった。少し待っているがよい」
待っている時間は、おそらくさほど長い時間ではなかったに違いない。
だが、祈っていると時間の進みは遅くなるのだろうか。
いつまでも、時が経たないような気さえした。
……斜め上方向からの声で、神が戻ってきたことを知るまでは。
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