第六章
第67話 再面談
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
白い空間に、ぽつんと一人。
ここは神と初めて会った場所だ。
「来たか」
またあの時と同じように、後ろから声がした。
この声は、最初に聞いたときの神の声。地上に降りてきたときの声とは違う。
振り返ると神がいた。もちろん最初にここで会ったときの顔だ。
恰好もあのときと同じだった。浄衣のような純白の服。そして後方に流されている長い髪。
とりあえず俺は「遅くなってすみません」と一言謝罪したが、待たされたことについては特に気にしていない様子だ。
「俺、これから、帰ることになるんですね」
神はすぐ返事をしなかった。
「……?」
そして返ってきた答えは、夢にも思っていなかったことだった。
「残念だが、お前は元にいた時代には帰れない」
何を言われているのか、わからなかった。
「どういう意味ですか?」
「そのとおりの意味だ。元の時代に帰ることはできない」
「え。なぜ……ですか」
「お前はすでに死んでいるからだ。よって、元の時代に帰るということは不可能だ」
やはり何を言われているのか、わからない。
俺、今ここにいるではないか。
死んでいる? どういうことだろう。
「死んでいるって、どういうことです。冗談ですか」
「冗談ではない。思い出してみるとよい。お前が落ちた崖は、助かるような高さだったのか?」
「……。それは、そうではなかったと思いますが……」
「わたしは、死んだ人間のみ、召喚して使うことができる。そしてこの空間も、人間は死者でなければ入ることができない。つまり、お前は紛れもなく死んでいるということだ」
そこまで言われて、やっと意味が分かってきた。
俺は死んで。死んだけど、魂? 精神? そういった類の存在が一時的に残されていて、それが今の自分なのだろうと。
……。
死んだ。
そうか。そうだったのか。
それで今度こそ、終わるということなのか。
今あるこの意識も、終わる、と。
「俺を……騙していたんですか?」
「すまない。嘘をついたつもりはなかったのだが」
「でもあなたは、俺が約束を守れば……あ」
――そうか。確かに嘘は言っていない。
「なるほど。あなたと約束したときの会話を思い出しましたが、約束したのは『この時代からの脱出を取り計らうこと』でしたね。元の時代に返すとか、生き返らせるとは、一言も言ってない」
「そのとおりだ。わたしもお前に悪いことをしたとは思っている。
お前が『自身を死んだと認識していない』こと、そして『あの時代から脱出するということを、生き返ることだと勘違いしていた』こと。どちらもわたしは気づいていたが、お前には黙っていた」
「なんで、言ってくれなかったんで
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ