第六章
第66話 未来に、お別れ
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で言えば、まだ梅雨が明けるには少し早い時期だ。
でも、よく晴れていた。
久しぶりに歩く首都の神社の境内も、気持ちのよいものだった。
見上げると、樹木の青々とした葉の隙間から、夏めいた光が差し込んでいる。
いよいよ、この時代からはおさらばだ。
俺は、神社の本殿から。クロは、その横にある小ぶりの祠の霊獣像から。
まずは、前に神と面会した白い空間に行くことになるのだろう。そしてそこから、二十二年間慣れ親しんだ平成の時代に帰ることになるのだと思う。
まずはクロからだ。
「クロ、元気でな」
「クロお疲れさま!」
「お疲れ様でした」
見送りに来た国王とカイル、そしてタケルがそれぞれクロに抱き付いて、別れの挨拶をしている。
護衛の兵士たちも全員が立礼していた。
クロが像の前に向かおうとする。
「あ、クロ。ちょっと待った」
「なんだ」
クロの前で、しゃがんだ。
「こちらの時代に来てから、いろいろと世話になった。ありがとう……と俺が言うのは、お前的にはあまりよくないのかな」
「そうだな」
「相変わらずだな。じゃあ、頭を出してくれ」
俺のすぐ目の前に、白い頭が差し出された。
その上を、右手の手のひらで、ゆっくり撫でる。
耳の角度が下がり、まぶたが閉じられた。
たぶん、俺は初めてクロの頭を撫でた。
頭頂部の毛は短いが、柔らかかった。
逆にこちらの手が撫でられているような感触だった。
「……」
手を離すと、クロはゆっくりと目を開けた。
「じゃあ、またあとでな」
「ああ……」
クロが霊獣像の前に進む。
そして瞑想に入った。
「あ――」
クロの姿は消えた。
さて、今度は俺だ。
「あの。あんまり泣かれるとこっちもキツいんで。できれば笑顔で送り出してくれると嬉しいな、と」
「……無理に決まっているだろ」
「そう……だよ……」
「無理です……」
嫌な予感はしていたが、国王、カイル、タケルの三人が号泣していた。
「陛下、短い間でしたがお世話になりました」
「たまには遊びに来い」
「いや不可能ですって」
「いいから来い」
「……じゃあ、その機会があればよろしくお願いします」
「カイルには助けてもらってばっかりだったな。ありがとう」
「あぐっ……そんな……こと……うぐっ…………」
「コラ泣きすぎだって。お前はなんでもできるから、あまり心配はしてないけど。頑張れよ」
「……うん……うっ……兄ちゃんも……」
「ああ。俺も頑張るから」
「タケルはこれから仕事が多くなって大変だと思うが、大丈夫か?」
「大丈夫です。皆さんのために頑張ります」
「そう
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