第六章
第65話 水平線効果
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工知能にはまったく見えない」
「なるほど」
「よって、常に水平線の手前だけを見て、どの選択肢がよいのかを判断することになる。……では、水平線の手前が『滅亡』しか見えなくなったらどうなるだろうか?」
「どの選択肢も選べなくなりますね」
「そうだ。そうなると、その『滅亡』を無理矢理に水平線の向こう側へ追いやった選択肢を作りあげ、それを選ぶことになる。イメージできるか?」
「無意味なアクションを連発して、滅亡の手前の水域を無理矢理増やす――つまり暴発する、というわけですか?」
「そのとおりだ。お前がこの時代に現れ、遺跡の発掘調査が再開され、そしてタケルが帰順したことで、地下都市の場所が突きとめられた。
その時点で、総裁の人工知能の中で、すべての選択肢で滅亡が見えたのだろうな。だからひたすら無意味な延命策を打ち出して暴走した。そう考えれば矛盾はない」
総裁という人工知能の水平線効果。
そんなものに俺らは振り回されていたらしい。
だったら、なおさら。
無駄に二万人を虐殺してしまう事態にならなくて、本当によかったと思う。
戦後処理が終わるまで、地下都市はそのまま軍が治め続けることになる。
染みついている洗脳教育や、これまでの歴史のことがある。住民がこちらの国にすぐ馴染むということは難しいと思う。
だがそのあたりの問題は、あの国王ならきっとうまく解決していくに違いない。
隣のベッドには、タケルがいる。
安堵感や達成感、その他いろいろな感情が入り混じって、そしてそれらが溢れてきたのだろう。さっきまでずっと泣いていた。
――終わったんだな。
体中の力が、抜けていくような気がした。
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