第六章
第65話 水平線効果
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「でもそれに地上を妨害する仕様を組み込むなんて。設計者、歪みすぎじゃないですか」
「いや、最初はそのような設定ではなかったはずだ。あくまでも現時点での推測にすぎないが、文明崩壊後に『組織』が立ち上がった際、その当時の指導者と技術者が、都合のよいように設定し直したのだろう。
そしてその後、永い年月を経ることで、人工知能を調整する技術も失われた。地下都市の住民は、いつしか総裁が人工知能であると教わることもなくなり、不老不死の絶対的な存在だと刷り込まれ、その決裁にただ従うだけの奴隷に成り下がった。
だいたいそんなところではないかと思っている」
やはり考察はしていたようで、詳しく解説してくれた。
しかし……優秀な$l工知能、か。
「その優秀な人工知能が、急にトンチンカンな判断ばかりして暴走したようになったのも、俺の中では引っ掛かっています。どうしてなんでしょうね」
それは、俺が遺跡に行ったあたりからだ、とレンは分析していた。
ひたすらハイリスクローリターンな国王暗殺未遂を繰り返したり。メンバーに無意味な自爆をさせたり。籠城してじっとしていればよいのに、わざわざ攻撃隊を出してきたり。
とても優秀とは思えない判断を連発していた印象が拭えない。
「それは水平線効果のようなものだろうと考えているが」
「水平線……効果……」
どこかで聞いたような気がした。
――あ、思い出した。
確か、人工知能特有の問題だったかな?
コンピュータ将棋などの話で聞いたことがある気がする。
とても人間が敵わないような優れた将棋ソフトでも、自分の王将が詰まされることが確実になると、途端に相手への無意味な王手を連発し、壊れたように暴走してしまう現象が発生する。その原因が、人工知能の水平線効果であると聞いたような。
もちろん、詳しい仕組みまでは知らないが。
「総裁は地下都市を管理するコンピュータだ。当然あらゆる分野のあらゆる状況で選択肢の判断をし、決裁をしなければならない。穴があってはならないというわけだ」
「はい」
「そうなると、選択肢の探索は『全幅探索』に近い探索方法をおこなっていたのだろうと考えられる」
……?
「あの、『全幅探索』ってなんですか。すでに話についていけないんですけど」
「簡単に言うと、『最初から選択肢を絞ってそれを掘り下げて読む』のではなく、『すべての選択肢を読む』ということだ」
「ああ、それならわかります。そうしないと穴ができますもんね」
「全幅探索に近いことをしていたとすれば、いくらコンピュータの性能がよくても、その性質上、読みの深さやシミュレーションの深さは有限とならざるをえない。
その有限となる境目を水平線に例えるわけだな。水平線の向こうは、人
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