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永遠の謎
369部分:第二十四話 私の誠意その七

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第二十四話 私の誠意その七

 その納得しないままでだ。王は話した。
「しかしそれでもだ」
「陛下、しかし」
「王はだな」
「時としてその御心とは逆のこともです」
「決めなければならない」
「それが今か」
 そのだ。フランスとの戦争だというのだ。
「決めるのではなく追認か」
「そう思われますか」
「私の決断は参戦への決断だ」
 それだというのだ。王の決断は。
「開戦を決めるのはだ」
「プロイセンです」
「そうだ。プロイセンだ」
 バイエルンではない。王の国ではないのだ。
「バイエルンはそのプロイセンに続くだけだ」
「その通りです。ですから」
「これが時代の流れだ」 
 王の言葉は項垂れるものになっていた。顔はあげている。しかしその言葉は項垂れていた。その項垂れる声での言葉だった。
「バイエルンはその中に従うだけだ」
「それではですね」
「私は従う」
 王は言った。
「その時代にだ。いや」
「そうですね。いや、となりますね」
「私はその決断をするしかないのだ」
 参戦への決断、それだというのだ。
「私はそれをする」
「そうです。バイエルンはそうするしかないのです」
「卿はそれに従うのか」
 ホルンシュタインを見た。そうしての問いだった。
「その時代の流れに」
「進んでしていると思われますか」
「さてな。そこまではわからないが」
「それは置いておいてです」
「プロイセン、いやドイツとフランスの戦いは避けられない」 
 王はこの現実を再び話した。
「ビスマルク卿は必ずだ」
「そう、戦争をされます」
「今考えておられる筈だ」
 そのだ。戦争のことをだというのだ。
「どうしてはじめるか。そして」
「そして?」
「どう終わらせるかだ」
「終わりまで考えておられますか、あの方は」
「全てにおいてはじまりと終わりがある」 
 王はそこから話した。戦争についてだ。
「戦争も然りだ」
「何時までも続く戦争はありませんか」
「その通りだ。次の戦争の目的は二つある」
「二つ。では一つは」
「ドイツ統一だ」
 最初に来るのはこれだった。
「ドイツ統一が目的だ」
「そうですね。そのドイツにです」
「そして次はだ」
「はい、次は」
「ドイツ皇帝だ」
 皇帝、こう言ってだ。王の言葉が微かに動いた。
 心の揺れ動きを出してだ。そうしてだった。
「第二の帝国の主を生み出すことだ」
「そうですね。神聖ローマ帝国に続く第二の帝国です」
「神聖ローマ帝国は滅んだ」
 十九世紀にだ。王の愛するフランスの主、しかもそのバイエルンを王国にしたナポレオンによってだ。神聖ローマ帝国は完全に抹消されたのだ。

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