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戦国異伝供書
第十七話 大返しの苦労その十四

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「まだな」
「決まっていませんな」
「あの方だけは」
「果たしてどの方にとなっていますが」
「それでも」
「そうじゃ、羽柴家との縁戚の話が出ておるが」
 羽柴秀吉と秀長のこの家と、というのだ。
「どうするか」
「あの家ですな」
「京極家、徳川家と比べるとどうにも」
「今でこそ万石取り、大名の家で」
「国持大名にもなりそうですが」
「しかし身分を言う者が多い」
 羽柴家のそれをというのだ。
「どうしてもな」
「はい、元は百姓の家」
「他ならぬ羽柴殿ご自身が」
「足軽より身を起こされた方」
「そうした方なので」
「その家に茶々を嫁にやるか」
 それはというのだ。
「わしはよいと思う、そもそも浅井家もな」
「ですな、今でこそ大名ですが」
「かつては何でもない家でした」
「出て来たのは殿から数えて二代前」
「そうした家です」
 長政にとって祖父である亮政からだ、浅井家にしても成りあがりという見地から言えば羽柴家と変わらないのだ。
「だからですか」
「羽柴殿の家のことは考えず」
「そうしてですか」
「茶々様の縁戚の相手としますか」
「孫七郎殿のご子息とか」
 秀次のというのだ。
「縁戚の話を進めるか」
「そうされますか」
「茶々様については」
「そうされますか」
「そうするか、家自体は万福丸に継がせる」 
 三姉妹の兄であり長政と市の最初の子である彼にというのだ。
「そうするがな」
「姫様方については」
「色々と悩みますな」
「我等は」
「全くじゃ、しかし娘達は皆美しく育つわ」
 戦国一の美女と言われる市の娘だけあってというのだ。
「ならばな」
「そのことは安心して」
「話を進めていきますか」
「そうしようぞ」
 こうしたことも話す長政だった、陣中にあっても家のことは考えていた。それが彼等の家の先を決めることだからこそ。


第十七話   完


                  2018・9・9
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