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戦国異伝供書
第十七話 大返しの苦労その十三

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「その時はな」
「はい、その時は」
「即座にですな」
「これまでの道をとって返し」
「そしてですな」
「我等は越前に入る」
 この国にというのだ。
「北ノ庄城にな」
「そこで上杉家に備え」
「睨みを利かしますな」
「そこから先には行かせぬ」
「断じて」
「そうする、我等が守っておれば」
 北陸をというのだ。
「義兄上は安心して武田家と戦える」
「まさにそうなりますな」
「では、ですな」
「毛利家との戦が終われば」
「すぐにとって返しましょう」
「戦はこれで終わりではない」
 毛利家とのそれだけではない、長政もよくわかっているのだ。
「むしろじゃ」
「それからですな」
「肝心なのは」
「武田、上杉との戦」
「そちらこそですな」
「そうじゃ」
 長政ははっきりと答えた。
「そちらがな」
「主で」
「それで、ですな」
「毛利家との戦は」
「やはり」
「まだ序盤じゃ」
 戦全体のというのだ。
「都を安んじ本願寺を降したが」
「それでもですな」
「毛利家との戦はまだ序盤」
「武田家、上杉家との戦が正念場」
「そうなりますか」
「そうであろう、では我等も義兄上の言われる通りに進むぞ」
 山陰を西にというだ、こう話してだった。
 長政は軍議の後でだ、家臣達にこんなことを話した。
「戦とは関係ないが」
「はい、姫様のことですな」
「茶々様、初様、江様の」
「あの方々のことですな」
「三人共大きくなればな」
 そうなればというのだ。
「それぞれ嫁に送るが」
「既に初様と江様は決まっていますな」
「正式にではないですが」
「それでも」
「初は京極家に入る」
 婚姻を結んでというのだ。
「そして江は徳川家じゃ」
「ですな、徳川殿の三男殿と」
「そうお話が進んでいますな」
「しかし一番上の茶々がのう」
 どうにもと言う長政だった。
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