366部分:第二十四話 私の誠意その四
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第二十四話 私の誠意その四
「そうさせてもらいます」
「反発に気をつけることだ」
「時代が見えない者に」
「そうするといい。私は平気だが」
王が平気というとだ。ホルンシュタインはそれまで微笑んでいたものをいささか変えた。笑みは変えないが目に怪訝なものを宿らせた。
その怪訝な目でだ。王に言うのだった。
「平気ですか?」
「嘘に聞こえるか」
「この場合は嘘ではないでしょう」
そうは呼ばないというのだ。
「別のものです」
「その別のものとは」
「そうだと言わなければならないもの」
ホルンシュタインは何故かこうした表現を使ってきた。
「そうではないでしょうか」
「言わなければか」
「はい、立場故に」
今度はこう言うのであった。
「そうしなければならないものではないでしょうか」
「私は今それを言ったのか」
「そう思いますが」
「王故にか」
ホルンシュタインが何を言いたいのかを読んでだ。王は述べた。
「私が王だからか」
「そうでなければいいのですが」
「私は何を言われても耐える」
王は目は伏せなかった。しかし伏せようとしていた。それをすんでのところで止めてだ。そのうえでホルンシュタインに述べるのである。
「そうする」
「耐えられますか?」
「王は倒れない」
これが王の言葉だった。
「決してな」
「ですが陛下」
ホルンシュタインの顔から笑みが消えていた。そうなってしまっていた。
「王も人です」
「それはその通りだが」
「ならば。耐えられないこともあります」
こう王に言うのである。
「人の言葉にも」
「言葉にか」
「言葉は毒です」
今度はこんなことも言うホルンシュタインだった。
「人の心に毒の花を咲かせます」
「そうして人の心を蝕むというのだな」
「そうです。言葉程人の心を蝕み傷つけるものはありません」
「そうかもな。しかしだ」
「それでもですか」
「私は王だ」
このことがだ。王を王たらしめていた。バイエルン王はそうした意味で生まれついての王だった。
だがその生まれついての王故にだ。王は言うのだった。
「だからそうした毒の花はだ」
「咲きませんか」
「咲かせないようにしたい」
望みだった。できればというのだ。
「そう思う」
「咲かせないようにですか」
「毒の花なぞあってはならないのだ」
この願いもだ。王は口にした。
「心を蝕む様なものは」
「その通りですね。誰もがそう思います」
「その通りだ」
「ですが。どうしてもです」
「それは宿ってしまう」
「宿らせてしまうのです」
自分でそうしないようにしてもだ。それでもだとだ。ホルンシュタインは話す。彼の言葉は必然的にそうなってしまう、そうした言葉だった。
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