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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
82話:帰国
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ディンなら、気心のしれた仲じゃ。うまくやれるじゃろう。しかし儂は兵卒からの叩き上げじゃ。さすがに分艦隊司令官は無いと思っておったが、まさか艦隊副司令官とはな。そこまで人材面で厳しい状況じゃとは思っておらなんだが」

儂がそう言うと、シトレ大将は少し渋い顔をしながらティーカップをソーサーに戻した。

「あまり大きな声では話せない内容なのですが、戦況が劣勢なのを理由になにかと軍部の人事や昇進に国防委員会が口を出しているのです。このままでは実績や能力ではなく、国防委員会への伝手で、昇進や要職への任命が行われかねない状況です。教官をはじめウランフ、ボロディンの両名にも、次回の戦いでは昇進に値する功績を上げて頂きたいのです」

「うむ。なにかと噂になっておったが、実際は惜敗にも関わらず昇進したロボス大将に、その取り巻きのパエッタ、ムーア、パストーレか。命を賭けて功績を立てるより政治家に近づいた方が簡単じゃし、功績も認められやすくなるとなれば甘い誘惑なのはわかるが、儂が地方回りをしとる間にそんなことになっていたとはな」

「はい。なんとか戦力化できている8個艦隊ですが、先任の正式艦隊司令官の中にはそろそろ退役を迎える方もいます。パエッタはともかく、ムーアとパストーレには正規艦隊司令官はまだ無理でしょう。宿題ばかりが先行しますが、私も全力でサポートしますのでなんとかお願いいたします」

心持と味覚は連動するようじゃ。素晴らしいお茶が少々苦いものになってしまった。だが、さすがに指導が厳しいからと、裏で手を回すような輩が正規艦隊司令官になるようなことがあれば、この風潮はまずます強まるじゃろう。それにしても劣勢じゃと言うのに、国防委員会もロボスも何を考えておるのじゃろうか。盗賊が迫っておるのに番犬の牙を抜くようなものじゃろうに。派閥形成のような事はあまり得意ではないのじゃが、そうも言ってはおれぬようじゃ。

「承知した。この老人で役に立てるなら、艦隊副司令の件、受けさせてもらおう。少なくともヤン中佐を始め、若木たちは育っておるのじゃ。良い形で次代につなげられるように老骨に鞭打つとしよう」

シトレ大将はホッとした様子で感謝を伝えてきた。教え子に頼み込まれて無下にする訳にもいかんじゃろうて。しばらくは女房孝行に勤しむつもりじゃったがそうも言ってはおられんようじゃ。早速じゃが、久しぶりにグリーンヒル中将やクブルスリー中将の所にも顔を出してみる事にしよう。まずは統合作戦本部の事情を、儂なりに確認せねばなるまいて。


宇宙歴791年 帝国歴482年 12月上旬
首都星オーディン グリューネワルト伯爵家・別邸
ジークフリード・キルヒアイス

「ラインハルト、ジーク。よく無事に帰ってくれましたね。お帰りなさい」

「姉上、ただいま戻りました。
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