1st season
9th night
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か困ったような表情の柴崎が携帯で電話をかけていた。
「……あ、もしもし柴崎です……マッさんまだ店に居ます?」
苦い表情を浮かべながら、報告をする柴崎。あぁ、彼にとっては、なんと締まらない夜だろうか。
「いやあの……件の連中とはケリを着けたんですが……え?勿論勝ちましたよ」
その一言を告げるのに浮かべた表情は、年相応の青年のものに見えた。
「その……すみません、燃料持って来てください。ガス欠しました」
電話の向こうでは一瞬の沈黙の後、爆笑が巻き起こりながらも、待つように指示が出された。
同時刻。高速を降り、横浜市内のファミレスで向かい合うグレーラビットとスーツの男。
「どうでした?『R4A』と、うちのマシンは」
いやらしい笑みを浮かべながら、不機嫌そうにしているグレーラビットに尋ねる。
「どうもこうもあるか。あの野郎、あんな隠し玉を持っていやがったとは……」
「悔しそうなあなたの表情、それはどこからのものですか?」
「両方だ」
彼は、ベイブリッジにて後方から迫ってくる2台と遭遇した。しかしそれは、彼らからは映らなかったのだろう。彼からすれば、ただでさえ慣れないマシンの最高速状態に恐れを抱いて踏み切れず、挙句そんな彼を2台が悠々と追い抜いて行った。せめて追いすがるべくすぐに追跡をかけるも、さらに数段上の加速を見せつけられ、完全にグレーラビットの戦意を失わせた。今の彼の心中にあるのは、若き老兵への純粋な敗北感と、与えられたマシンを乗りこなせなかった自分へのふがいなさ、という意味だと男は捉えた。
「わかりました。ところで、以前お話ししたことですが」
「……俺の車を、あいつらに勝てるように仕上げる。本当に可能なのか?そんなことが」
「今日見て確信しました。あの車に乗り続ける限り、あなたは彼らには一生届かない」
きっぱりと青年は言い切った。それはわかっていたのか、グレーラビットも何も返さなかった。
「……『Dの遺産』、ご存知ですか?」
「何……?」
はっきりと目の色が変わったグレーラビットの反応に気をよくした青年は、畳みかけた。
「あのNSX−Rで、C2最速と噂される赤いFDと赤いS15。彼らを撃墜できれば、あなたに私の知る『Dの遺産』の情報をお伝えしましょう」
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