1st season
9th night
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「ば……馬鹿じゃねぇのか!?何でそんな動きが出来る!?」
「できればこんなこと、マシンに負担掛かるからやりたくないんだけどね」
一瞬の出来事。しかし高い技術と柔軟な発想、己のマシンを知り尽くした経験こそがこの一瞬を作り出す。それに負けじとコーナーを抜けたマスタングが吠える。サイド・バイ・サイド。
「ここまでやるのは久しぶりだ。さぁ見せてみろよアメリカ野郎!」
どんな時も冷静にいたはずの柴崎が吠えた。若き老兵が本気になった瞬間である。
そして勝負は佳境、ベイブリッジへ突入する。長大な直線。広い車線。一般車も居ない、オールクリア。最高の状況がそこにはあった。
「これで終わりだ、クソ野郎!」
マスタングのドライバーはシフト横にある赤いカバーを跳ね上げた。中にはシンプルなスイッチが配置されている。そのスイッチを押し込んだ。
「……なんの音だ?」
横にいるマスタングの咆哮に、何らかの噴射音が混じった事に気がついた。その一瞬後、一段の勢いでマスタングが加速し始める。
「ナイトラス……!?車重の理由はそれか!」
ナイトラス・オキサイド・システム。過酸化窒素をエンジン内部に送り込み、膨大な酸素を供給するパワーアップチューニング。短時間限定だが大幅なパワーアップが可能な必殺技とも呼べるシステム。マスタングのドライバーは勝利を確信していた。本国アメリカでも、彼のこのパワーに着いてこられたマシンなど、ドラッグカーくらいしか居なかったからだ。
「ハッ、やはりこの程度ーーーー!?」
彼は目を疑った。R35はそこに居た。先程と殆ど変わらない距離、ほんの5mの距離。ピラーの死角に紛れてはいるが、鮮やかな赫はその存在を主張する。奴はそこに居る。
「……面白いじゃないか、マスタング」
咆哮を上げるR35。不敵に笑う柴崎。今までと変わらない車内。一つだけ違っていたのは、過給圧を示すメーターが振り切れている事だ。その加速力を前輪にも割り振り、マスタングの加速に並ぶ。
「切り札はお前だけじゃないって事さ。どちらが先に降りるか、我慢比べと行こうじゃないか!」
勝負は呆気なく決まった。ほんの僅かなR値のコーナーで、マスタングが滑ったのだ。そのままスピンしながら外壁に吸い込まれ、舞い上がり、墜ちた。
「パワー至上主義の末路だ……哀れな……」
巡航速度に落とし、悠々と走るR35。今宵のバトルは、凄まじくも後味は悪いものとなった。
「皆同じだ……降りるか、死ぬかだ」
数分後。R35と柴崎は湾岸の路側帯に停車していた。停止板は遥か後方に置かれ、マシンは先刻迄の戦闘が嘘かのように街灯の下で静かに鎮座している。その隣で、どこ
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