暁 〜小説投稿サイト〜
Unoffici@l Glory
1st season
9th night
[1/4]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
「…………ほう」

 柴崎は後ろに付きながら先行する3台を観察。爆音を奏でるマフラーも、スーパーチャージャーの独特な駆動音も、彼からすれば特別なものは見当たらない。コーナーの度に過剰に重い動きをするが、リーダーのマスタングは丁寧な処理でトラクションを抜けさせずにクリアしていく。

「大口叩くだけあって、あのリーダーは思ってたよりは上手い。それなりに走ってはいるようだな」

 だが他の2台は特筆することが無い。流石にそういう車の乗り方としては下手でこそないが、こればかりはいかんせんエリアが悪いと言わざるを得ないだろうか。

「まぁ、ここじゃなけりゃ俺でさえ負けたかもね。純粋なパワー勝負じゃ、どうしたってアンタラ筋肉モリモリマッチョマンの変態集団には勝てやしなかったろう」

 ただでさえ地元のドライバーにとっても、この緩やかな連続コーナー区間は繊細なマシンコントロールが要求される。当然のごとく、マシンパワーが上がれば上がるほど、そのコントロールはシビアなものになっていく。柴崎からすれば、このグループはこのエリアをそれほど走りこんでいないことが後ろからでも見て取れた。慣れない車体の揺られ方は先行する2人の精神を着実に削り、チャージャーとカマロの挙動が僅かにブレ始める。

「だが、俺とここでやるには年季が足りない」
「チィっ!ふざ……」

 そしてカマロが一際大きくブレた瞬間を狙い、Rの鼻先をイン側に押し込む。怯んだカマロは減速し、Rを先行させてしまった。焦って再加速するも時すでに遅し。Rのバックミラーの彼方へ消えていった。

「クソッタレ!あんなヒョロガキに……!」
「この分じゃ、予想通りもう一台も大した事は無さそうだな」

 舞台は環状を抜け横羽線に突入する。先刻よりコーナーは緩やかであり、自然とスピードレンジが上がるものの、それはさらなる繊細な制御をドライバーに要求する。またこのエリア特有の強い高低差と、細かい連続コーナーが彼らのマシンに襲いかかる。

「しまっ………!」
「そういうとこだよ。隙だらけだ!」

 減速が足りなかったか慣性が強過ぎたのか、一瞬チャージャーのリアが浮き上がる。抵抗を無くした駆動輪はエンジンの回転数をはね上げ、着地するまでの一瞬で過剰な回転を生み出す。

「そんな乗り方してたら、ここじゃ命がいくつあっても足りやしねぇぞ」
「クソジャップがっ……」

 案の定、着地した瞬間に大きくバランスを崩すチャージャー。後輪のグリップ力は路面に伝わらず、擬似的なドリフト状態でふらつきながら加速する。だが車線を跨ぐほどに揺らされた車体は、もう半分制御を失っているような状態。柴崎がクリアになった車線に飛び込むのに、さほど苦労は要らなかった。

「まぁ……所詮余所者だと思えばこんな物か」

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ