359部分:第二十三話 ドイツのマイスターその十四
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第二十三話 ドイツのマイスターその十四
「私は彼に導かれるな」
「その通りですね」
「そして私は彼女と結ばれるのか」
ここでもだ。己を投影して話すのだった。
「エヴァと」
「エヴァですか」
「そうだ。エヴァだ」
彼女だというのである。ゾフィーはだ。
「彼女とだ」
「そうですね。ですが陛下」
「何だ」
「エヴァなのですね」
このことをだ。ホルニヒはあえて王に話すのだった。
「陛下が結ばれる相手は」
「そうだ」
その通りだとだ。また王はホルニヒに話した。
「その通りだ」
「それは」
いぶかしむ顔でだ。ホルニヒはまた述べた。
「ゾフィー様なのですね」
「そうだが何かおかしいのか」
「おかしいということはないのですが」
いぶかしむ顔のままだった。ホルニヒは王に述べていく。
「ですがゾフィー様はエヴァなのですね」
「何かがあるのか。そのことに」
「いえ、ありません」
ないとは答える。そうだとだ。
しかしそれと共にだ。ホルニヒはこうも言うのだった。
「言って宜しいでしょうか」
「いい」
それはいいと答える。王は言葉を遮らなかった。
「言ってくれ」
「はい、それでは」
こうしてだ。ホルニヒは王に対してだ。実直に、己の思うことを話すのだった。
「ゾフィー様と結ばれるのにエヴァを出されるのは」
「おかしいのか?そのことが」
「何かが違うのではないでしょうか」
こう言うのである。
「それではです」
「違うのだろうか」
「はい、ゾフィー様とエヴァはまた違う存在なのでは」
「同じだと思うが」
王は表情をそのままにホルニヒに答える。
「それは」
「陛下がヴァルターだからですか」
「私は彼女をエルザとも呼んでいる」
またしてもワーグナーだった。ここでもだ。
「私はローエングリンなのだ」
「だからなのですね」
「そうだ。私がそうだからだ」
ワーグナーの生み出したヘルデンテノール、それだからだというのだ。
「彼女もまたそうなのだ」
「左様ですか」
「だから私はワーグナーに導かれ」
「ゾフィー様と」
「エヴァと結ばれる」
王はエヴァを見ていた。一人だけしか見ていなかった。
「そうなるのだ」
「わかりました。そうなのですね」
「そのワーグナーが間も無く来るのだ」
ワーグナーを待ち。そのうえで話していく。
そしてだ。遂にだった。そのワーグナーが来たのだった。
彼の姿を見てだ。そうしてであった。王から言うのであった。
「よくぞ戻られました」
「はい、陛下」
ワーグナーは一礼してからだ。王に応える。王は玉座から彼のその姿を見てだ。微笑みそのうえでまた自分から言葉を出すのだった。
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