358部分:第二十三話 ドイツのマイスターその十三
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第二十三話 ドイツのマイスターその十三
「だが。それでも私はあの方の好意の全てを喜んでいる」
「政治的な思惑があるとも考えられますが」
「それもあるだろう」
だがだ。それでもだというのだ。
「だが、だ」
「あの方は」
「私に対して。純粋に好意を抱いてくれている」
そうだというのである。
「そのことは非常に有り難い」
「左様ですか」
「あの方は。私を理解し好意を抱いてくれている」
このことはよくわかるのだった。王はその感性でそのことを理解するのだ。
そうしてだ。王は言うのであった。
「そうした人がいてくれるのは幸いだ」
「陛下を理解してくれている」
「そして私の最大の理解者は」
「あの方ですね」
「今ここに来る」
遂にだ。ここにだというのだ。
「この私の前にだ」
「では」
「そうだ。リヒャルト=ワーグナー」
彼の名前をだ。自分から出したのだった。
「来るな」
「今こちらに向かっています」
「ドイツのだ」
この国のだ。そうだというのだ。
「マイスターだ」
「ドイツのマイスターですか」
「ハンス=ザックス、この時代のハンス=ザックス」
それこそがだと話してだった。
「その彼に再会しよう」
「陛下」
ここでだ。侍従の一人がだ。
王の前に出て来てだ。こう言って来たのだった。
「ワーグナー氏が来られました」
「通してくれ」
満足した笑みで。侍従に答えた。
「今すぐここに」
「わかりました。それでは」
「この日が来ること」
それがだというのだ。
「そのことがどれだけ嬉しいか」
「そうなのですね」
「これだけの喜びはない」
また言う王だった。
「あの曲も持って来てくれる」
「そのハンス=ザックスの」
「そうだ。マイスタージンガー」
王の言葉は実に楽しげである。王にしては珍しく。
「彼が来るのだ」
「左様ですか」
「そうだ。彼こそはハンス=ザックス」
完全にだ。かつてのマイスタージンガーとワーグナーを同じに見ていた。そしてそのうえでだ。その彼がここに来るのを待っているのだった。
その中で王はホルニヒに話す。
「そして私はだ」
「騎士ですね」
「ヴァルターだ」
王自身もまた、だった。己に投影しているのだった。
「それなのだ」
「では陛下」
ホルニヒは王の今の言葉とマイスタージンガーを合わせてだ。こう話した。
「陛下は」
「何だ」
「陛下はワーグナー氏に導かれるのですね」
マイスタージンガーのあらすじからだ。こう話すのだった。
「そうなりますね」
「そうだな。なるな」
その通りだとだ。王も認める。
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