暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝供書
第十七話 大返しの苦労その十二

[8]前話 [2]次話
「まさに真の侍、ですが」
「軍師がおらぬ」
「しかも血気に逸るので」
「そこが問題じゃ」
 どうにもというのだ。
「それで毛利家に向かっては」
「強勢でしかもその主は謀神とまで言われる御仁」
「勝てる筈がないわ」
「左様でありますな」
「若し織田家が助けぬままならば」
 山中と十人衆達はというのだ。
「やがてはな」
「毛利家に討たれていますな」
「そうなっておるな、だからな」
「それ故に」
「わしも迂闊に進まさせぬ」
「ああした御仁達こそ生きられて」
「悲願を果たすべきじゃ」
 自分達が心から願っているそのことをだ。
「だからな」
「必ずですな」
「山中殿と十人衆が若し血気に逸る様なら」
 万が一そうするならというのだ。
「よいな」
「はい、それがしが止めます」
 磯野は長政に確かな声で答えた。
「そうします」
「頼むぞ、そしてだ」
「出雲に進みますな」
「そうするとしよう」
 こう言ってだ、長政も兵を西に進ませていった。進軍は順調で毛利の兵は極めて少なかった。その兵の少ないことにだ。
 長政はすぐに察しをつけてだ、山中や磯野達自身が率いる諸将に言った。
「山陽じゃ」
「そこにですな」
「毛利家は兵を集めていますな」
「うむ」
 そうだというのだ。
「そしてじゃ」
「山陽を攻める殿と殿が率いる軍勢と」
「決戦を挑みますか」
「そしてそのうえで」
「雌雄を決するつもりですか」
「毛利家といえど兵と武具は織田家に及ばぬ」
 長政はこのことを話した。
「到底な」
「殿が率いられる兵は十五万を優に超えます」
「そして鉄砲も長槍も多いです」
「具足もいいです」
「その織田家と戦うには」
「そうじゃ、とてもじゃ」
 山陽と山陰を制した毛利家でもというのだ。
「一方に兵を集めねばな」
「適いませぬな」
「到底」
「左様ですな」
「そうじゃ、だからな」
 それでというのだ。
「毛利家は山陽に兵を集め」
「そしてそちらで雌雄を決する」
「そのうえで、ですな」
「今はですな」
「山陰はあえて捨てて」
「山陽で」
「そのつもりじゃ、だからここには兵は少ない」
 山陽にはというのだ。
「だからな」
「ここはですな」
「我々は兵を進め」
「出雲、石見を手に入れていき」
「その毛利家の後ろを脅かしますか」
「そうするが相手もそれはわかっておる」
 毛利家の方もというのだ。
「だからその前にな」
「雌雄を決しますか」
「織田家と」
「そのつもりですか」
「間違いない、では戦が終わればな」
 毛利家とのそれがだ。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ