不安
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イザーリンクは苦笑を浮かべた。
「似たようなものかと――ミューゼル中佐は常に帝国のことを考えておりますから」
微笑で答えた言葉に、わずかな間があったことをカイザーリンクは感じた。
だが、そのことについて深くは問わない。
むしろ。
「では、君はどう思うのかね」
「私も同じです」
「それは。ミューゼル中佐がそう思うからかね」
意地悪な質問であっただろうか。
しかし、問うたのは今まで行ってきた駆け引きとは離れた――本心だ。
それが言葉にできたのは、少年のようなキルヒアイスの性格か。
あるいは。
――自分の似た境遇を感じたからか。
自らの心を殺しても――愛したい人がいたから。
問うた言葉に、即答はなかった。
カイザーリンクが見つめる先に、キルヒアイスが驚いたような顔をしている。
答えを探している様子。
先ほど同じだと即答した言葉ではなく――見つめる先で、キルヒアイスが頷いた。
「はい。ミューゼル中佐も私と同じ思いを思っているからです」
「では。それが違えた時に、君はどちらを選ぶのかね」
それまで浮かんでいた微笑が消えた。
そんな様子に、初めてカイザーリンクはキルヒアイスの表情を見た気がする。
だが、沈黙は悪手。
そう考えたのだろう。
「私もミューゼル中佐も、きっと同じ道を目指すと思います」
言葉は、カイザーリンクの心を何ら動かさなかった。
そうかとカイザーリンクは呟き。
「それが帝国にとって良い道であることを期待しよう」
そんな在り来りな言葉を告げて、カイザーリンクは踵を返したのだった。
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