不安
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れた時刻よりも遥かに早い――五分前だ。
「ヴァルテンベルク大将がご到着されました」
士官の声とともに、室内に入ってカイザーリンクの姿に、ヴァルテンベルクは驚いた表情を浮かべた。
「これはカイザーリンク大将――お待たせしたようで」
「いえ。メルカッツ中将と話しておりましたので、お気になさらず」
「で、あればよいのですが。これはメルカッツ中将――戦巧者と名高い閣下をイゼルローンに迎えられて、嬉しいものです。歓迎いたします」
笑顔を浮かべて近づいた様子に、カイザーリンクとの会話は打ち切られた格好だ。
それにどこかほっとした様子を見せるカイザーリンクを、メルカッツはわずかに見て、苦い顔をした。
+ + +
イゼルローン要塞の通路を、メルカッツとメッサーは進んでいた。
わずかばかりの会議が終わり、宇宙港へと続く通路だ。
散歩後ろから静かにメルカッツの背後を歩きながら。
「いかがいたしましたか」
メッサーが静かに声をかけた。
わずか数十分ばかりの会議で、しかし、メルカッツが求めていたものは得られなかったようだ。
メルカッツはどこか足早に、難しい顔をして進んでいる。
「君は艦隊の様子をどう見るかね」
短い言葉に、メッサーは即答しなかった。
沈黙と、足音だけが鳴り響き。
「僭越ながら――閣下にとってはあまり気分のよろしいものではないようです」
「言葉を飾るのはあまり好かないな。報告はわかりやすくあるべきだ」
そう答えながらも、メルカッツにとっても意図は伝わったのだろう。
メルカッツが艦隊司令に就任して、数か月。
感じていた違和感を、メッサーも同じく感じていたようだ。
元々司令部にいた人間はどこかよそよそしい。
決してメルカッツに敬意を払っていないというわけではない。
だが、言葉や態度に、最上位の人間を前にする違和感がそこにあった。
彼と一緒に来た人間はそうではない。
例えるなら、背後にいるメッサー中佐だ。
先ほどの迷いの様に、わずかでもメルカッツの機嫌を損ねたらどうなるかという損得を考える頭がある。そこで黙っているか、ありきたりな発言で濁すか、あるいはメッサーのように言葉を飾りながらも本音を言うか、それは人それぞれであろうが、そこに考えがあってしかるべき。
決してメルカッツは、誰もが自分の下でへりくだれといいたいわけではない。
だが、上官を気にしない態度に、長く軍にいたメルカッツは違和感を抱いていたのだ。
「私は新任の司令官であるからと思っていた」
それは実力不足か、あるいは外様であるのか。
そうであるならば、答えは簡単だ。
上は誰かということを、わからせればよいだけの話。
穏健派とは言われても、それを許すほどメ
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