第二十八話:報復2
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っ柱をへし折る」事を成し遂げることを命令されていたラシャは、最早充分目的は果たしたと考えていた。ちらりと視線を投げると、まさに絶賛炎上中の空母から飛び降りたVTシステムが、悠々と海を泳ぎきり、ラシャ達がいる砂浜に到着したところであった。
最早長居は無用だった。ラシャはホルスターから拳銃を引き抜くとナターシャに向ける。後は彼女を殺して死体を隠蔽することで、銀の福音に関するプロジェクト関係者に大きく痛手を与えるという形でケジメをつける筋書きだ。
「そう……やっぱりそうなのね」
ナターシャは彼の意図を察したかのような儚い微笑みを浮かべると、目をつぶってその瞬間を受け入れる。ラシャは引鉄に指をかけ……ようとしたが、引鉄が拳銃から消失していた。
「……あれ?」
何度か指を動かしてみるも、あるはずのパーツがそこにはない。装備は全て事前に点検していたにもかかわらずだ。
「あれぇ!?」
思わずスライドを外して確認してみるも、やはり引鉄のみが煙のように消えていた。
「痛っ!?」
突如、ラシャの向う脛を蹴る存在があった。拳銃から目を離すと、漆黒のふくれっ面の様なものがキスできかねないほどの至近距離にあった。
「ぶほぅ!?」
不意を衝かれたと同時に、ガスマスクの気圧調整が狂ったせいで珍妙な音を出して仰け反ったラシャ。ふくれっ面の正体はこちらに近づいてきたVTシステムだった。その姿は製作された当初の姿であるブリュンヒルデを模した状態であった。
彼女(?)は未だに祈るように目をつぶるナターシャを庇い立てるように、ラシャの前に立ち塞がった。
「生かせ……と?」
思わず口をついて出てきた言葉に、VTシステムはうなずく。何か思うところがあったのかそれともラシャの殺戮に歯止めをかけたかったのか。顔のない相貌からは何も伺えない。
「まあ良いか。今回の仕事で当分『飢える』ことはないだろう」
ラシャが銃をホルスターにしまい込むと同時に、VTシステムは引鉄の部品をコインのように指で弾いて彼に渡した。
「お前、随分芸達者になったな?」
ラシャのからかうような言葉に、VTシステムは腰に手を当てて得意げな様子だ。
「さて、お嬢さん。気が変わったのでこれからエスコートだ。ちょっと狭いが我慢してくれ」
「え、何?さっきのってVTシステムじゃ……きゃあ!!」
自分の運命が少なくとも好転した事に気づいたナターシャは、目の前に立つ自らを生かした存在に驚く間もなくラシャに抱きかかえられて、浜辺に隠されていたプロペラントタンクに放り込まれた。
「え?何!?何!?」
「邪魔するよ」
半分パニックになってるナターシャを無視
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