第二十八話:報復2
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な弾を吐き出した。
「っざけんなあ!!」
ファング・クェイクの手甲が唸りを上げ、飛来する礫を左フックで叩き伏せた。考えなしに軌道を捻じ曲げられた弾丸は、隔壁をぶち破って数人の兵士を即死させた。
「くたばりやがれ!!」
勢いに任せて汚泥に右腕を捩じ込むと同時に、拳に仕込まれた試作品の爆裂装甲が火を吹いた。
くぐもった轟音と共に泥は醜悪に波打った。効いているのかどうかでさえまるでわからない有様であった。それどころか、噛みかけの巨大なガムの塊に手を突っ込んでしまったかのごとく、粘度の高い物体が鬱陶しく絡みついてくる。
「は、な、し、や、が、れぇ!!」
ファング・クェイクの試作内装のPIC補助ブースターが展開され、機体を後退させるべく火を噴いた。翼のような炎が床を焦がす。汚泥の怪物も負けじと彼女の手足に絡みつく。
「うあああああああああぁぁ!!」
生理的な嫌悪感に襲われたイーリスは爆裂装甲を何度も炸裂させる。爆発させるたびに滑稽な形に変化していく汚泥。しかし、状況は一向に好転することはなく、時間と同時にイーリスの冷静さも消耗されていく。
「ケケケッ、存外弱イナ」
突然個人回線を通して汚泥が音を発した。それも意味のある言葉を紡ぐという形で。
「しゃ、喋れるのかよ……?」
恐る恐る口を開くイーリスに対して、汚泥は饒舌に話し続けた。
「あア、喋れルとモ。コの程度造作も無イ。どいツもこイつも舐め腐っテクれタお蔭デ殺り易カったよ」
ゴボリと不快な気泡を笑い声のように泡立たせながら、汚泥はイーリスごとファング・クエイクに覆い被さろうとする。シールドエネルギーが更に消費され、空中投影モニターからエマージェンシーが飛ぶ。既に彼女の愛機のエネルギー残量は3割を切っていた。
「お前もヒトツになレ」
ここまで言われて身の危険を感じないほどイーリス・コーリングは鈍感ではなかった。
「っざけんなぁ!!」
その時、彼女を避けるようにして、曳光弾の嵐が汚泥に降り注いだ。なんとか体制を立て直した後詰めの部隊が、イーリスと同様に間に合わせの処置を施したISで反撃を開始したのだ。中には対人装備で抵抗を試みる者も居た。
第1世代ISの登場、否、白騎士事件直後より、米国政府はISを兵器利用を前提とした運用に定めた運用プランを軍需企業に提示していた。他国の産業スパイや旧世代の軍需産業のロビー活動を始めとしたあらゆる逆風を退けてきた結果、アメリカのIS運用は一部を除いてあらゆる状況を打破できるマシンスペックを実現させてきた。パークライナー級秘匿空母や名前のない部隊を筆頭に、不正規戦を想定した部隊を中心に実
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