80話:任地
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だ。そう言う事も含めて自分の立場を認識しておいた方が良い。伯の前でこういうことを言うのはずるい気もするが、伯を追い落とそうとする輩からすれば、ミューゼル卿を暗殺でもすればそれが口実になると判断しかねん訳だからな。煩わしいかもしれんが、軍歴を重ねる以上、ついて回る話だ。なら最初からしっかり学んでおいた方が良いだろう」
自分がリューデリッツ伯を含め、今後上官になる方を追い落とす材料になるやもしれぬなどとは思ってもみなかった。同じ陣営に属しながら、背中を刺すような連中がいるのか。そんな敵の存在を考えた事は無かった。
「まあ、今から身構える必要はないし、しっかり特別な事情を含めても、実力で協力を求められる人物になればよい。自分が『特別な配慮』をされる存在なのだと弁えておけは良いだけだ。それを当たり前だと思ってしまうと、お互いにやりずらくなるだろうから。そこだけは注意するようにな」
伯がそう言うと、シェーンコップ卿に促されて一緒に執務室から退室する。
「この後は、俺の連隊の司令部に顔見せしたあとは、割り当てられた宿舎で荷ほどきだな。晩餐は、伯から同席するようにと指示が出ている。今夜は同席されないが、前線総司令部や叛乱軍の領域に向かう高級士官が同席される事もあるだろう。それも将来、異動した時の為の布石になるはずだ。マナーと関わる人間の経歴を事前に確認しておいて、さりげなく会話に盛り込んでみる所から初めよう。まあ慣れればそんなに難しい事じゃない」
確かに俺は人間関係や上役に配慮するのが苦手だ。キルヒアイスの方がそう言う事は得意だが、わざわざ実践させるという事は、出来るようになるまで次の任務は無いと考えたほうが良いだろう。必要性は理解している。気は乗らないが、俺とキルヒアイスで敵軍全てを殴り倒せるわけではない。上官や部下から進んで協力してもらえる人間関係を作ることの重要性は理解しているが、何やら友人作りの方法を教わるようで気まずい思いがある。
気まずいと言えば、しばらく『ご機嫌伺い』が出来なくなる旨を、皇女殿下にお伝えした際も、ひどいものだった。あの大人しかったディートリンデ皇女殿下が急にポロポロと泣き始めたのだ。なんとか同席されていたベーネミュンデ侯爵夫人に取り成して頂いたが、オーディンに帰還した際には必ず『ご機嫌伺い』に上がることを約束させられた。まだ8歳の子供相手に邪険にも出来ぬし、淑女に泣かれながら頼みごとをされれば断るわけにもいかぬ。俺は軍人になったのだ。子守りになったつもりはないのだが......。
「ラインハルト様、それにしても巨大な基地でございますね。見て回るだけでもひと月はかかるのではないでしょうか?」
「キルヒアイス准尉、見立てが良いな。総司令のルントシュテット元帥が着任された際は、視察するのに3カ月かかったそ
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