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ツインズシーエム/Twins:CM 〜双子の物語〜
ツインレゾナンス
第21話 止まらない奔流
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は悔しく、自分の無力さを呪う材料だった。自分に対して真剣に想いを伝えてくれた少女に、何もしてあげられない自分がいることが、とても情けなく思えた。
と同時に、その悔しさと情けなさを自分の手で振り払いたいという思いが芽生えて来た。それは驚くほどの早さで未来を求めるべく枝を伸ばす木となり、その枝に無数の果実をつける。今のエースにとって簡単に取れる実もあれば、1人では手を伸ばしても絶対にとれない実もある。そのとれない実が、今自分が求めている未来なのだと、何故かはっきり分かる。
エースは、1人静かに涙を流した後、その身体を床から引きはがした。まるで限界ギリギリの動作をするかのように辛く感じ、今の自分の情けなさを痛感する。
「頼むから……もっとちゃんと動いてくれよ……」
壁に寄りかかったまま歩く、という少しの動作をこなすだけでも、体が悲鳴をあげるような状態。体力と魔力どちらも底が簡単に見えるようなその様では、今のように悪態をつくことは出来ても戦うことは出来ない。今森の中に突入したところで、間違いなく戦力にはならないだろう。
「行かなきゃ……」
しかし、そんな建前の理由など、エースにはどうだっていいのだ。ある種の衝動が、エースの身体を少しずつ玄関へ、そしてその先へと動かしていく。
「いけないんだ……」
それは渇望にも似た、エース自身の意思。ある意味では欲望に忠実に動く獣のような姿である。取られたくない、という子供じみた願いが、今のエースの原動力。
「頼むから……」
その身体にのしかかる現実は確かな重みとなり、エースを押し潰そうとしてくる。それでも、エースは必死に前へと進み続ける。
前以外を向けば、そこにはきっと望まぬ未来がある。それを見てしまえば、きっともう一度立ち上がることは出来ない。自分の勘にそう告げられたが故に、前しか向けないのだ。
「もう一度だけでも……」
直感と渇望。もはや思考がほとんど関与しない領域からの命令が、エースの身体を夜の森の中へと動かしていく。忘れないようにとミストは玄関に置いたものであろうマジックペーパーを持ったのは、僅かに残った思考が発したサインなのか。
「……会いに、行くんだ」
苦痛がなくなったわけでは決してない。しかしながら、身体を動かすことに迷いはなかった。
あの想いを告げるためにフローラがどれだけのことを考えたか、エースには分からない。どれだけ迷ったかも分からない。どれだけ心を痛めたかも分からない。
だからこそ、前に進むのだ。ここで諦めては、永遠に聞けないままかもしれない。
分からなかった彼女の心を聞くため、告げられたあの想いに自分の答えを出すため、エースは、森の中へと体を引きずり続けた。
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