暁 〜小説投稿サイト〜
ツインズシーエム/Twins:CM 〜双子の物語〜
ツインレゾナンス
第21話 止まらない奔流
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
自虐交じりの言葉が背中に向けて告げられると、ミストは思いを胸に森への移動を開始した。






* * * * * * *






 エースに対して背中を見せていたため、言葉の後の僅かな震えの理由はもう永遠に分からない。しかしながら、きっとミストならやってくれるだろうと、エースはそう思っていた。その十数秒後に窓枠の中の世界にあった、頼れる弟の姿は、きっちりと目に映っている。


 それを見て安心出来たエースは仰向けに寝転がった姿勢のままで目元を隠し、息を細く長く吐き出した。自分の心を落ち着かせるための深呼吸だ。

 少しの間、部屋には静寂が訪れていた。心地よい夜風が吹いてくる中、少し前の部屋でのフローラのやりとりを思い返す。始めて面と向かって言われた『好き』の2文字を、思い出す。

 すると、それまで凪のように落ち着いていた心が、急に騒めきだした。落ち着こうとしても深呼吸が上手くいかなくなり、様々な思いが逡巡する。ぼんやり色々と思い浮かべて落ち着こうとする。

「これで……いいんだ」

 それでも落ち着けない自分に、そう言い聞かせる。今の状態では足手まといにしかならないのだから、ミストとセレシアに任せればきっと事は上手く運ばれる、と、そう繰り返す。まるで魔法の言葉であるかのように、それを心の中で復唱していた。


「これで……いいんだ…………」


 繰り返して、自分に言い聞かせて、これでいいんだと何度も言って、これが最善だと何度も呟いていた。ただそれだけを繰り返す機械のようになろうとして、それだけを唱え続けていた。

 しかしそれでも、心に落ち着きは訪れない。


「これで…………いい…………」


 諦めの言葉で自分を貶めて、足手まといになる自分の現状を自分に突きつけて、何も出来ない自分の無力さを何度も頭に書きこんだ。現実をしっかり見ろ、いつも出来ていることだろ、と落ち着かない自分の心に向けて、延々と矢を放ち続けた。心を壊そうと、放ち続けていた。その奥に、何かをせき止めようとしている、心の中の堤防があることも知らずに。




「わけないだろ…………っ!!」

 散々言い聞かせて、否定し続けたエース。それでも、自分の素直な気持ちに抗うことは、出来なかった。

 ついに、腕で隠した目元から涙が隠せなくなった。自分の感情を理屈と現実で押さえつけて、それでも出てくる感情を押し込むように言い聞かせた分だけ、反動としてそのまま溢れ出てしまう。自分の心を壊そうとして、壊れたのは心でなく心にたまった想いを溢れないようにせき止めていた堤防の方だった。

 想いをきちんと受け止められなかった自分、何も出来ず誰かに未来を託さざるを得ない自分、そのどちらもがエースにとって
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ