第十話
[1/5]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
4月24日特別実習当日、他のメンバーよりも早起きしたカイムの姿は第三学生寮のロビー……ではなくトリスタの一角にある質屋《ミヒュト》にあった。
「で、お前みたいな小僧がここに何の用だ?言っとくがここは金貸し屋じゃねえしそうだとしても学生には貸さねえぞ。」
「何でいきなり金になるんですか……。クォーツとスタングレネード系統ありませんかね?」
「後半は金とは違った意味で学生らしくねえなおい。まあ『Z組』の人間なら必要になるか。」
「流石情報屋、話が早い。今回はこんなんでどうでしょう。」
そう言うとカイムは手に持っていた箱をカウンターに置き蓋を開ける。中身はあきらかに市販品ではなさそうな雰囲気を醸し出すワインボトルが数本入っていた。
「ふん、全く何処で仕入れてきたんだこんなもん。こっちの対価が安いくらいだぜ。」
「金使えませんし口止め料も込みならこんなもんでしょ。誰かしら寄っても何も言わない、鉢合わせても口裏合わせるですからね。」
「まあその条件を飲んだのは俺だからな。そら、持っていきな。」
そう言うと店主であるミヒュトはカウンター下からいくつかのクォーツと投擲用の爆弾を取り出して差し出した。
カイムはそれを受け取り礼を言うと店から出て、駅へと向かった。
中に入ったカイムの目に飛び込んできた光景は……
「…………」
「…………」
顔を合わせず無言且つ無表情で立っているユーシスとマキアス、それを見て頭が痛そうな他のB班のメンバー、その姿を同情の目線で見るA班のメンバーという状態であった。
(なあ、もしかして駅入ってからずっとあの有様か?)
(ええ、そう。)
(全く喋ってないのに凄く空気が重いよ……。)
(何か声を掛ければそれを切欠に口論になりかねないから下手に注意もできないしな。)
(もはや筋金入りというやつだな、あれは。)
カイムの質問にA班のメンバーが答える。そうこうしている内に駅構内にアナウンスが流れ出発の時間になった。
「……フン。」
「時間だ、行くぞ。」
アナウンスが聞こえるなり二人はさっさと電車の方に向かってしまった。どこか競うような歩き方になっているのは気のせいではないだろう。
「あー、エマもガイウスも大変だとは思うが頑張ってくれ。そっちは二人に懸かってるといっても言っても過言ではないだろうしな。フィーも出来る限り手伝ってやれよ?」
「ああ、やれるだけやってみよう。」
「私も何とかやってみます。」
「……今からでも班変われない?」
「サラもいないし諦めなさい。」
「……薄情者。」
残りの三人に励ましの言葉を送ると苦笑いしながらも腹を決めた
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ