第六章
第61話 突入(1)
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
クロには前に戦に行ったときのように、犬用の鎧を着けた。
拳銃の弾が直接当たることはないと思うが、跳弾などの可能性を考えれば、そのほうが安全だ。
「クロ、重くは感じないのか?」
「そこまで重いとは思わない」
「そっか」
無愛想な顔に短いフレーズ。
相変わらずだな――内心で少し苦笑する。
この時代に来る際に、クロは俺に対して言葉が通じるようになった。彼を呼び出した神がその能力を与えたと聞いている。
しかしクロは俺に対し、今まで無駄な会話はほとんどしてこなかった。せっかく喋れるのに。
表情にしても、そこまでバリエーションは豊かではない。非常時以外はほとんど変わらないように見えてしまう。
だが、こちらに来てから今まで、ずっと一緒だったからだろうか。その態度が無関心を意味しないということが、今ではよくわかる。
そして、いつもと変わらないように見えても、なんとなくそこに潜む感情がわかるようになってきている。
これから突入作戦が始まるという緊張。
参加者――たぶん、特に俺――が無事に帰ってこられるかどうかという心配。
今はその二つが混ざっていると思う。
元の時代では絡みもなく、クロと俺は他人のようだった。
俺のほうはクロを避けていたし、クロの俺に対する印象も決してよくはなかったかもしれない。
だから、クロとの関係に限って言えば、タイムワープという災難に感謝する部分もある。
やっと、本来あるべき関係になれたから。
「じゃあクロ。今回も頼んだぞ」
「わかった」
また短く、そう答えた。
神、タケル、カイル、兵士たちは、既に準備が整っている。待機状態だ。
神はとんでもない大剣を持っている。もはや鈍器にしか見えない。
長身、長い銀髪とあわせ、雰囲気だけは一段と超自然的になった。
剣の技術はあるのかとこっそり聞いてみたところ、「正しい握りかたすらわからない」という素敵な回答が得られている。
ただ、地下都市の性格上、扉の施錠部分を壊したりする必要が出てくる可能性はある。そのときには大剣が役に立つかもしれない。
***
両軍がにらみ合ったまま、日没の時刻が近づいてきた。
薄暗くなってきている。
ヤマモトが再度集合場所に現れた。今度は国王も一緒だった。
最終確認だ。
「オオモリ・リクよ。お前は民間人だが、この突入部隊では責任者だ。皆を頼んだぞ」
「はい。頑張ります」
「神よ。ここに集まった者たちへの加護をお願いする」
「ああ……心配するな」
「タケルよ。この国としては、もうお前を立派な国民であると考えている。必ず無事に戻ってくるのだぞ」
「わかりました。ありがとうござい
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ