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銀河英雄伝説〜其処に有る危機編
第十話 溜息しか出ない
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ウンシュバイク公、リッテンハイム侯を含めたほんの一部だ。それなのに卿は卒業式に陛下の御臨席を実現した。面子を潰されたと思っているんだ」
今度はエーリッヒが溜息を吐いた。

「双頭鷲武勲章を辞退してだけどね」
「誰が如何見ても陛下の御臨席の方が大きい。卿には陛下を動かせる力が有るという事だ。貴族達が不満に思うのも当然だろう」
「……」
「それに卒業生達の親族の問題も有る」
“親族?”と呟いてエーリッヒが小首を傾げた。そうか、エーリッヒはオーディンで生まれた。そして両親が居ない。その所為で気付かなかったのだ。

「卒業生達の中には門閥貴族達の領地で生まれた者も居るんだ。彼らは卒業すると父兄と共にオーディンに有る貴族の屋敷に行く。そこで共に夕食をとる」
「……」
「分かるだろう? 余程の事が無い限り領主と共に夕食をとる事など一生に一度有るか無いかだ。卒業生にとっても両親にとっても名誉の日と言って良い。貴族にとっても重要な日なんだ。いずれ出世すればそれなりに利用価値はある。共に夕食をとり自分を印象付けようとする。だが陛下の御臨席が有ってはな……」
「印象は薄れるか……」
頷く事で答えるとエーリッヒが切なそうに溜息を吐いた。

「卒業生も父兄も印象に残ったのは陛下の御臨席でありそれを実現した卿なんだ。それに式辞の事も有る。貴族達が不満に思うのも無理は無い」
「そんなつもりじゃなかったんだけどな」
「そうだろうな」
こいつの事だ、卒業生達を祝ってやりたいと思ったのだろう。実際陛下の御臨席が有った事で卒業式は盛大なものになった。だからこそ卒業生もその父兄もエーリッヒの事を忘れないに違いない。

「それにシュトックハウゼン、ゼークト両上級大将が卿を訪ねた」
「……それも問題なのか?」
恐る恐ると言った口調だ。
「問題視してないのは卿だけだ」
溜息を吐くな、俺の方が溜息を吐きたい……。なんでこいつは……。
「あの二人は最前線のイゼルローン要塞で十分に功を上げた。次は間違いなく軍中央で要職に就くと見られているんだ。その二人が揃って卿を訪ねた。皆は帝国軍三長官の懐刀である卿を通して三長官に自分を売り込もうとしたのだと見ている」
エーリッヒが首を横に振っている。

「そんなのじゃない。あの二人はそんな事は考えていないよ。ただ先日のイゼルローン要塞攻防戦で私のレポートが役に立ったから礼を言いに来ただけだ。それ以上じゃない」
「そうかもしれないが周りはそう見ていない。卿は宇宙艦隊の司令官達にも影響力が有るからな。貴族達は卿が軍の実力者だと見ているんだ。実際その通りだと俺も思う」
エーリッヒがまた溜息を吐いた。

「ローエングラム伯が私に敵意を持つのもその所為か……」
「いや、もっと悪い」
エーリッヒがじっと俺を見た。訝
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