第十話 溜息しか出ない
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して“あれは驚いたよ”と言った。俺も驚いたよ、上級大将が二人も揃って中将を訪ねたのだからな。
帝国暦487年 9月 1日 オーディン ギュンター・キスリング
「今コーヒーを入れる、座って待っていてくれ」
エーリッヒの勧めに従ってリビングのソファーに腰を下ろした。官舎の中はきちんと片付いている。忙しさを理由に散らかし放題にしている俺の部屋とは大違いだ。幾分忸怩たるものが有った。
十五分程でエーリッヒがトレイにカップを二つ乗せて現れた。俺の前に一つ、対面に一つ、甘い香りがする。エーリッヒはココアか。エーリッヒが対面に坐った。
「それで、相談とは?」
エーリッヒが幾分前屈みになって困った様な表情を見せた。
「怒らないで欲しいんだが……」
「……何を?」
「いや、このオーディンで何が起きているのか、教えて欲しいんだ」
如何いう事だ? 何を教えろと? 一口コーヒーを飲んだ。
「抽象的すぎるな、もう少し具体的に言って欲しい。何が知りたい」
エーリッヒの表情が益々困った様な表情になった。嫌な予感がした、余程に言い辛い事らしい。
「何と言うか、士官学校の校長になってから人と接する事が少なくなってね。情報に疎くなったようなんだ。このオーディンで何が起きているのか、さっぱり分からない」
「……それで?」
促すとエーリッヒが“うん”と頷いた。
「今日、アントンとナイトハルトが私に話しかけてきた」
「聞いている」
「そうか、……その時の事なんだが二人が私の事を同期の出世頭だと言ったんだ。そして私の事を帝国軍三長官の懐刀だと言った。どうなっているんだ? 私は士官学校の校長なんだが」
溜息が出た、頭痛が……。
「呆れるのは待ってくれ。他にも訊きたい事が有る」
「何だ?」
「アントンが気を付けろと言ったんだ。多分私に会いに来たのはそれを伝えるためだと思う」
「……」
「若い貴族達が私を敵視しているらしい。ブラウンシュバイク公が私に警告しろとアントンに命じたそうだ」
「ブラウンシュバイク公が?」
エーリッヒが曖昧な表情で頷いた。
「まあちょっと公とは色々有ってね。忠告してくれたらしい」
妙な話だ、エーリッヒとブラウンシュバイク公には繋がりが有るという事か。コーヒーを一口飲む事で表情を隠した。こいつは自分の事には疎いが他人の事には鋭い。俺が憲兵隊の監視チームの責任者だと気付いているかもしれない。
「それとナイトハルトも私に気を付けろと言ってきた。ローエングラム伯が私を敵視していると。如何いう事だ? 私は士官学校の校長だぞ。確かにレポートは幾つか出したが帝国軍三長官の懐刀になった覚えはない。それにローエングラム伯に恨まれるのも不本意だ。士官学校の校長ならのんびり出来ると思ったのに勝手
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