第六章
第60話 的中
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行軍は最終局面を迎えた。
現在も相変わらず川沿いを歩いているが、タケル情報によれば、かなり地下都市の入り口に近づいてきているらしい。
俺が地理を勉強したのは中学の頃だ。高校では日本史を選択していたので、地理の授業はまったく受けていない。
よって知識はかなり怪しいが、おそらくこの川は千曲川。
この時代においては、この川に名前はない。
中央高地と呼ばれるこの本州中央部に集落が存在したことがないので、名前を付ける必要がなかったのだ。
一昨日くらいからだろうか。川幅も広がり、河原の面積が増してきている。
左右から押しつぶさんとばかりに切り立っていた山岳の斜面もすっかり後退し、眼前の景色は開けてきている。
左右遠くに緑の山、中央には比較的ゆったり流れる川。そして広がる草原と森林――
盆地らしい景色が続く。
当初の予定どおり、地下都市があるとされる場所の五キロほど手前で、一度川を渡った。
そしてそこに広がる平地を進み、前線基地を設営する。
タケルいわく、ここは二つの川に挟まれた地であり、まれに大きな洪水がある影響により樹木も少なく、基地の設営場所にはもってこいとのことだ。
神が、「お前の時代でいう『川中島』というところだ」と教えてくれた。
千年経っているので、俺の時代から様変わりはしていそうだが。
さすがに兵士の手際はよかった。長旅の疲れなどものともせず、あっという間に前線基地の設営が終了した。
丸太を用いて櫓まで造ってあるが、これには見張り以外の大事な役割がある。
神と一緒に、できたばかりの櫓の上にあがらせてもらった。
俺だけの癖なのかもしれないが、高いところに登ると、なぜか遠景を見る前に下を見てしまう。
「結構怖いですね」
「十メートル程度だろう。人間はこれで高く感じるのか」
「これくらいだと地面がくっきり見えてしまうので、かえって怖い気がします」
「なるほど」
神が少しだけ面白そうに納得している。
「この櫓は、わざと発見されるように造ったということでいいのだな」
「はい。そうですよ」
このように背が高くて目立つものを造れば、地下都市側もすぐに気づくだろう。
基本的に地下都市では、大事なことはすべて総裁自ら判断するようになっているらしい。
よって、この櫓を発見したメンバーは直ちに上層部に知らせ、その上層部は総裁の決断を仰ぎにいくはずである。
そしてこちらの予想が正しければ、総裁は上層部に対し、外に打って出るよう指示を出すはず。
つまり、この櫓の見張り以外の大事な役割とは、『バレること』である。
二人で前方を見渡した。
「ここからだと、はっきりと見えるな」
「はい……」
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