340部分:第二十二話 その日の訪れその十一
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第二十二話 その日の訪れその十一
「しかしその魂は救われるのだ」
「救いは幸福ですね」
「最高の幸福だ」
救いこそ、しかも愛による救いこそがだ。最高の幸福だとだ。ワーグナーは言うしそれは実際に彼の作品にも如実に出ているものだった。
それを話してだ。ワーグナーはさらに考えるのだった。
「あの方にも救いを」
「最高の幸福を」
「あの方を敬愛せずにはいられない」
ワーグナーは尚更にであった。彼の庇護者だけでなく最高の理解者であるからだ。それで敬愛の念を抱かない方がおかしいことだった。
それを話しながらだ。ワーグナーはピアノのところに置かれている楽譜を見た。そのうえでコジマに対してこんなことも話した。
「指輪は後は完成させるだけだ」
「作品としてですね」
「そうだ。そしてその後はだ」
「いよいよですか」
「パルジファルにかかる」
その作品にだ。かかるというのだ。
「あの作品にだ」
「そうされますか」
「パルジファルは救いだ」
そうなると話すのだった。
「そうなるのだ」
「救いですか」
「ローエングリンにはならない」
そのことだ。断言するのだった。
「そしてだ」
「そして?」
「全ての英雄達はその作品で救われ」
「英雄達がですか」
「至高の存在となるのだ」
パルジファルを一つの存在とみなしてはいなかった。ワーグナーがこれまで生み出してきただ。多くの主人公達を同じだというのだ。
それを話してだ。ワーグナーは再び楽譜を見た。それでまたコジマに話した。
「音楽はこれまでとは変える」
「どの様に」
「儀式だ」
それだというのだ。
「儀式にするのだ」
「儀式ですか」
「そうだ、それにするのだ」
楽譜の中にあるもの、それは既にワーグナーには見えていた。
それを見ながらワーグナーは考えているのだった。
「パルジファルは儀式なのだ」
「神の儀式ですね」
「それになる」
パルジファルこそがそうだと話していく。
「若しかしたら私の最後の作品になるかも知れない」
「最後にですか」
「私ももう歳だ」
年齢もこともだ。彼は口にした。
「人は何時までも生きられる訳ではないのだからな」
「それでなのですか」
「そうだ。だからこそだ」
パルジファルがだ。最後になるかも知れないというのだ。
その話をしてだ。彼はまた述べた。
「あの作品は儀式にする」
「神の儀式となるのですか」
「指輪は舞台祝典劇だ」
四部作全てを合わせてだ。ワーグナーはニーベルングの指輪はそれに位置付けているのだ。つまり只の歌劇の作品ではないというのだ。
「だがパルジファルはだ」
「その作品は」
「舞台神聖祝典劇だ」
この言葉を出したのだった。
「それになるのだ」
「
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