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永遠の謎
339部分:第二十二話 その日の訪れその十
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第二十二話 その日の訪れその十

「そうなるのだ」
「その辺りは複雑ですね」
「複雑極まる。陛下は男性であるが女性なのだ」
 王の本質を。さらに話していく。
「そしてあまりにも清らかなのだ」
「清らかに過ぎると」
「あの方は幸せになれないのか」
 話はだ。ローエングリンに戻った。
「ローエングリンを御覧になられているからこそ」
「悲劇に終わるあの歌劇を」
「あの方の心の中には常にあの騎士がある」
 まさにだ。それはなのだった。
「恋をされておられるのだ」
「それがあの方の恋ですか」
「一途に、何処までも」
 ワーグナーは言葉を加えた。
「愛されているのだ」8
「それこそまさにですね」
「そうだ。愛なのだ」
 恋でありだ。愛だというのだ。
「あの方の恋愛なのだ」
「既に恋愛をしておられるのですね」
「しかも一途であられる」
 王の本質はワーグナーには全てわかっていた。
 そしてだ。その恋愛について話していくのだった。王の恋愛を。
「何処までもだ。純粋で一途であられるからこそ」
「それが悲劇ならば」
「悲劇に終わるのだ」
 ローエングリンの様にだ。
「ローエングリンは去りエルザは悲しみの中息絶える」
「あの方もまた」
「ローエングリンはこの世にいない者」
「その彼を愛するとなると」
「エルザになるしかない」
 それこそだ。即ちだった。
「あの方はまさにエルザになっておられる」
「間違ってもローエングリンではありませんね」
「違うのだ。あの方は今鏡も見ておられる」
「鏡を」
「そうだ。ローエングリンは鏡でもあるのだ」
 それでだ。王は自分自身を見てもいるというのだ。
「あの方はゾフィー様ではなくだ」
「御自身を見ておられる」
「そしてあの方に気付かれず」
「ローエングリンのあらすじもなぞっておられますか」
「そのなぞりも複雑だ」
 王のローエングリンへのなぞり。それはどうかというとだ。
「エルザであるのにローエングリンのそれになってもおられる」
「ローエングリンの」
「ローエングリンは城に帰る」
 エルザを別れてしまいだ。そこに戻るというのだ。
「あの聖杯城にだ」
「ではその後は」
「そこで過ごされる」
 聖杯城に生きる。そしてその中でだというのだ。
「現実ではない美と神の中でだ」
「美と神」
「あの方もその中に身を浸らせられるのではないのか」
 王がそうなってしまうのではと。危惧して話すワーグナーだった。
「エルザと別れ人々の前から姿を消したローエングリンと同じく」
「聖杯城の中で」
「そうなるのではないのか。そうした意味であの方はパルジファルでもある」
 エルザであるがだ。ローエングリンでもありパルジファルでもある。王は複雑だった
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