336部分:第二十二話 その日の訪れその七
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第二十二話 その日の訪れその七
「ニュルンベルグのマイスタージンガーがです」
「あの作品が」
「私はその時をどれだけ待ち望んだか」
王の言葉は続く。
「まことに幸せです」
「マイスタージンガーですか」
ゾフィーはそれだと聞いてだ。
また残念な顔を見せる。そうして王に話すのだった。
「あの作品についてですか」
「そうです。それが何か」
「いえ」
その心にあるものを話さない。そのうえでの言葉だった。
「ならば私もです」
「楽しみにされていますね」
「陛下は今度はヴァルターになられるのですね」
「そうですね」
その通りだとだ。王は笑顔で返した。
「そうなりますね」
「では私は」
「貴女は今度はエヴァになられるのです」
マイスタージンガーのヒロインだ。無論ソプラノである。
「そうなるのです」
「そうですか。私は今度はそれに」
「ワーグナーはザックスです」
王はまたワーグナー自身の話をした。
「彼はそれです」
「あの方はハンス=ザックスですか」
「思えばです。ワーグナーがザックスで」
そしてだというのだ。
「私がワーグナーで貴女がエヴァであり」
「それで三人になりますね」
「そうなりますね。ワーグナーは実際に私達を結びつけたのです」
「その私達を」
「素晴しいことです」
話していく。だがその言葉は。
空虚なものがあった。王の今の言葉はだ。空虚であり現実を語っているものではない、ゾフィーにもそのことはわかったのだった。
しかしそのことは表に出さずだ。王の話を聞いていく。王はさらにだった。ワーグナー、そして彼の作品についてさらに話すのであった。
「私はワーグナーが戻り彼の作品を観てです」
「そしてですね」
「ヴァルターになる。幸せなことです」
「あの、陛下」
ここでだ。ゾフィーは自分から話した。
「ヴァルターはエヴァと結ばれますね」
「はい、そうです」
「ではエヴァとエヴァは」
何故かは自分でもわからない。しかしこう言ってしまった王だった。
「結ばれるでしょうか」
「エヴァとエヴァはですか」
「はい、それはどうでしょうか」
「それはないでしょう」
王もだ。そのことはすぐに否定した。
「本人同士は結ばれませんから」
「そうですね。それは」
「そうです。しかしです」
「しかし?」
「何故またその様なことを」
怪訝な顔でだ。王はエヴァに対して問うた。
「仰るのですか」
「それは」
エヴァ自身もだ。今自分が言った言葉に気付いてだ。
そしてだった。こう話したのだった。
「何故でしょうか」
「御自身でもわかりませんか」
「どうしても。ただ」
「ただ?」
「ふと出てしまいました」
その言葉がだというのだ。
「
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