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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
77話:心配事
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の為だと言われれば、生き急ぐなとも言えない。

「リューデリッツ伯からも励んでいると聞いています。でもあまり無理はしないでね。士官学校へ進んで欲しかったけど、伯が任官を許可されたなら私からは何も言わないわ」

『あの方』からも、今のままで士官学校へ進んでも、学ぶものが無いばかりか、同期たちから妬まれるだけで為にならないとも、私が士官学校へ進んで欲しい事も理解したうえで、任官させた方が良いと判断したとすまなそうに伝えられた。後見人になって頂けたことで、私は安心出来たし、礼儀作法を含めて伯爵夫人として身に付けて置くべきことは修める事が出来た。ラインハルトはそういう配慮された環境にいる事をちゃんと感謝しているのかしら。考えれば考えるほど、『あの方』にご迷惑ばかりかけているのでは......。と不安になった。

「アンネローゼ様、お茶の用意ができました。お待たせしました」

ジークの声で、考え込んでいたことに気づく。紅茶の良い香りが鼻孔をくすぐった。

「ごめんなさいジーク、少し考え事をしていたわ。相変わらずの腕前ね。私も今日のケーキは新しいレシピに挑戦したの。気に入ってもらえれば良いのだけれど......」

2人が私の為に励んでいるなら、水を差すようなことは出来ない。せめて笑顔を見せなければ......。そしてジークの事も。すでに内密に支えるように指示をしているので、私からは出来るだけ何も言わない様にとも言われている。ケーキを切り分けながら、喉まで出かかった『ジーク、ラインハルトをお願いね』という言葉を飲み込んだ。私のせいで『あの方』の配慮を台無しにはしたくない。でも、私を守る立場を得る為にラインハルトたちが危険な目に合うくらいなら、そんな立場を目指してほしくはない。
心労が少なくなればと、数年先まで2人の予定されているキャリアも見せてもらった。当面、余程の大敗が無ければ戦死することは無いと、申し訳なさそうに言われたが、戦死する可能性がゼロではない事は私も理解している。普通の人生を歩んでくれればそれで十分だったのに......。
そんなことを考えながらもなんとか笑顔を通したが、屋敷へ戻る車の中で涙がこぼれてしまった。今は『あの方』の配慮を信じるしかない。よく館を訪れてくれるご夫人方も、ご当主やお子様方が軍人をなされている。皆さまはこんな思いを、日頃から抱えておられるのだろうか......。
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