77話:心配事
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になるだろう。孤立して出会った相手が陸戦の名手であることもあり得るし、圧倒的な大軍に包囲されることもある。そういう理不尽さを通じて、『我慢すること』を学んでもらうつもりだ。それを踏まえてミューゼル卿を支えるように。当然だがこの話は内密にな。意図を知ってしまっては無駄になるからな」
「分かりました。私に及ぶ限り、お支えしたいと存じます」
「うむ。頼むぞ!グリューネワルト伯爵夫人もご心配にはなるだろうが私の方からご説明しておくようにする。そちらはあまり心配せぬようにな」
伯が動いてくださるならアンネローゼ様にもご安心頂けるだろうが、次にお会いするときは私からもお詫びをした方が良いだろう。
「キルヒアイス、シェーンコップ卿はさすがだな。あのオフレッサー大将と引き分けたと聞くし、白兵戦技では帝国で屈指の人物だ。幼年学校のお遊戯とはふた味は違うな」
ラインハルト様の負け惜しみが、私の時間を戻してくれた。怪我だけはしないように配慮されていることも分かるし、実力差があることも分かっている。私は立ち上がってまだ大の字状態のラインハルト様に歩み寄り、手を差し出す。
「厳しいようなら、私から伯にお伝えしますが、どうされますか?」
「厳しいが辛くはない。大丈夫だ」
起き上がりながらラインハルト様は少し不本意なご様子だ。今までなら励ましていた所だが、少し控える事にした。
「来週には、姉上が別邸にいらっしゃる。ご心配をかけぬ為にもしっかり励まねばな」
ラインハルト様が一日でも早くアンネローゼ様を守れる立場を得ようと励むほど、アンネローゼ様がご心配される。かといってラインハルト様に励むなともいえない。なんとかリューデリッツ伯がアンネローゼ様のご心労を慰めて下されば良いのだが......。
宇宙歴790年 帝国歴481年 8月上旬
首都星オーディン グリューネワルト伯爵家・別邸
アンネローゼ・フォン・グリューネワルト
「姉上、来年の手合わせに同席頂けるとの事でしたね。日々励んでおりますのでご安心下さい。
ラインハルトが誇らし気にしているが、横のジークは少し困った様子だ。『あの方』からも任官後の厳しさを少しでも体感させるために、乗り越えられる課題ではなく、それぞれの分野で屈指の方々をぶつけると聞いているが、大丈夫なのだろうか......。
とはいえ、懸命に励んでいるから、労わってやって欲しいとも、おそらく手合わせは厳しい結果になるだろうから、その際は最後まで黙って見届けて慰めてやって欲しいとも言われている。
教育についてはお任せした以上、『あの方』を信じて言われたとおりにすべきだろう。弟が生き急ぐのも、私を守れる立場に早くなりたいという思いがあるのだろうとも言われた。生き急いでほしくはないが、それが私
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