77話:心配事
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う事だろう。
「ミューゼル卿の育成プランは既に用意してある。幼年学校を卒業して任官したとしてもその方針は変わらない。ただ、グリューネワルト伯爵夫人の手前もある。夫人からすればミューゼル卿の身に危険が無いようにと、私に後見人を依頼したはずだ。それが士官学校に進まないとなると、ご心配されるだろうし、私にも話が違うとご不信を持たれるやもしれぬ」
「グリューネワルト伯爵夫人のお気持ちを、今少しミューゼル卿にお考え頂くべきでした。申し訳ありません」
「別に責めているわけではない。キルヒアイス君が、グリューネワルト伯爵夫人とミューゼル卿の間で板挟みになっているのも理解している。だがな、このままだと小さなことでつまずいて命を落としかねぬとも思っている」
伯が聞き逃せない事を話し出した。確かに任官すれば戦地に向かうことになる。士官学校では戦死する事はない。事あるごとに自重をお願いしてきたが、もっと強くお諫めすべきだったのだろうか?
「私もご自重をお願いしてきたのですが、もっと強くお諫めすべきだったでしょうか?」
「いや、グリューネワルト伯爵夫人でも無理だったのだ。キルヒアイス君では難しいだろうな。現役の軍人たちとの手合わせだが、仮に全敗するようなことがあっても、ミューゼル卿が望む限りは任官させる。色々な知識を身に付ける機会を用意したが、肝心なことを教えていなかった。それを学ぶ最後の機会になるだろう。それを踏まえてミューゼル卿を支えて欲しい。任官までの期間はかなり辛い状況になるだろう」
「お支えするのは、側近として当然のことです。足りないものと言うと、軍人になる覚悟の様なものでしょうか?確かに『戦死』する場であることを軽く考えていたようにも存じますが......」
「キルヒアイス君、そういう覚悟はなってみないと出来るものではないと思うよ?事業計画や経営の事も座学で習っただろうが、実際にRC社の投資案件に携わって初めてどういうものか理解できたはずだ。それに陸戦でもない限り、人を殺す感覚を感じる事も無い。私も現役の軍人だが、『軍人になる覚悟』なんてものをきちんと説明はできないな。
話を戻そう、ミューゼル卿に足りないのは『我慢』する事だ。本来なら私が後見人になった時点で気づくかと思っていたが、そこだけは直らなかったな。周囲の気持ちや意向より自分の気持ちや意向を優先してしまう。軍はあくまで組織だ。周囲の協力を受けられなければ功績は上げられないし簡単に戦死するだろう」
確かにそうだ。成績は首席かもしれないが、ラインハルト様の危機に命を賭けて救援に来てくれる者はいるだろうか?やはりもっと強く私がお諫めしていれば......。
「今までは良くも悪くも励めば越えられるハードルを用意してきたが、明日からは良くも悪くも少し理不尽な状況
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