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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
76話:我儘
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卿の事を頼む際に少しでも『特別扱い』している事を薄める為だろう。あの坊やたちは、伯の配慮をどこまで理解できるのやら......」

ロイエンタールは自分がミューゼル卿の出汁にされたことが不本意なのかもしれないが、伯の行動がきっかけで、異動の際は上官が足を運んで挨拶する風潮も生まれている。一概に悪とは言えないだろうが、見込まれた以上、大人げないがミューゼル卿には勝たせてもらうとしよう。

「卿が言う事が正しいなら、ミューゼル卿の鼻っ柱を折れる人材だと見込まれたという事だ。まずはそこから始めよう。ましてや講師役をしていた我らが、戦術シミュレーターで負けるわけにはいかんからな」

この話は、声をかけられた全員に伝えよう。全勝する必要もないかもしれないが、伯に見込まれた以上、何かのタイミングでミューゼル卿を預かることもありうる。その時に戦術シミュレーターで負けたとあってはお互いやりにくいだろう。多少姑息な気もしたが、敵の分析は普通に行われる事だ。大人の狡さを学ぶ意味でも丁度良いだろう。俺は狡さとはかけ離れた印象しかないミューゼル卿を思い出しながら、皆に伝えるミューゼル卿の攻略法を考えていた。


宇宙歴790年 帝国歴481年 4月上旬
惑星エルファシル 駐屯部隊仮設基地
ヤン・ウェンリー

「この度、エルファシル駐屯基地、参事官を拝命しました。ヤン・ウェンリー少佐です。よろしくお願いします」

「うむ、基地司令官のビュコックじゃ。とはいえ、儂は異動したばかりじゃ。ヤン少佐の方がエルファシルには詳しいかもしれんな。インフラを立て直したら避難民たちの帰還が始まる。今の焼け野原よりはマシになるじゃろうが、なかなか厳しい現実に直面することになるじゃろう。軍への信頼回復も急務となる。脱出作戦を成功させたお主がいれば、避難民達も多少は安心出来よう?今回は貧乏くじを引かせてしまう様な形になったが、なんとか役目を果たしてほしい」

基地司令官のビュコック少将は二等兵からのたたき上げだ。マーロヴィア星域の警備司令官をされていたはずだが、エルファシル星系の防衛体制の立て直しを命じられ、少将に昇進された。昇進は嬉しいものかもしれないが、インフラをズタズタにされた星系の防衛体制の立て直し、しかも住民は必ずしも軍を信頼していないとなると、喜ばしい任務ではないだろう。貧乏くじを引かされたのはむしろビュコック司令官だと思うのだが、こちらを気遣ってくれている様だ。意外なことに、椅子を勧められた。

「お気遣いありがとうございます。ただ、正直ホッとしている部分もあります。ハイネセンにいても、広報課の道化役にされるだけでしょうし、拝命した任務も一段落した所でした。避難民の方々の事も気がかりでしたし、個人的には参事官として赴任できたことを嬉しく思っています」


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