第六章
第57話 地下都市へ +用語・登場人物紹介
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いよいよ、地下都市へ向けて出発する日が来た。
兵士たちが、ミクトラン城の広い中庭に集合している。
俺は国王ら首脳陣と一緒に行動することになるので、国王直属の兵士のかたまりの中にいた。
出発のタイミングで、タケルの手枷を外すことになっている。
彼は帰るところがあるわけでもなく、態度も従順だったため、もともと逃亡のおそれはなかった。元暗殺者ということがあるので、他の人間を安心させるために手枷を付けていただけだ。
これからは国の統治の及ばない土地を行軍することになる。手が自由なほうが、いざというときによい――そのような考えから、今回外す許可が出たものである。
俺の馬の綱は、手が空いていた兵士にいったん持ってもらった。
「じゃあタケル、外すぞ。心残りはないな?」
「心残り?」
「ずっと付けてたからさ。手枷に愛着が湧いていたりとか、あるかもしれないし」
タケルは一瞬キョトンとしたが、すぐに穏やかに微笑んで答えた。
「大丈夫です。さすがに愛着はありませんので」
「そうか。まあ、よく考えたらあるわけないよな」
「あ、でも。あなたに背中を流してもらったり、エイミーたちに世話をしてもらえなくなるのは少し心残りですね」
そんなことを言っているが、彼なりの冗談だろう。
周りに面倒を見てもらっていたことについては、ずっと申し訳ないと思い続けていた可能性が高い。
彼、真面目だから。
「よし、外れたぞ」
彼の両腕は、久しぶりに自由になった。
すぐに肩や肘、手首を動かし、各関節の感触を確かめている。
そして、俺に向かって行儀よく頭を下げてきた。
「今までありがとうございました」
「……。そう言うとお別れの挨拶みたいだから。やめよう」
「そうですか?」
「ああ。しかも俺、たいした世話はしてないから。着替えを手伝ったり、一緒に風呂に入って体を洗っていただけだ」
「嫌ではありませんでしたか」
「ん? 別に嫌じゃなかったが?」
「じゃあ今後もお願いしましょうかね」
タケルは穏やかな顔のまま、そんなことを言う。
俺はどう返したらよいかわからず、少しの間そのまま見つめ合ってしまった。
「たまに反応に困ること言うよね……」
「あはは、すみません。冗談です」
冗談だったようだ。あまり笑えないので困る。
「これから出発だけど、気持ちの準備は大丈夫か? こんな展開になってしまって本当にすまないと思っているが……」
「大丈夫ですよ。ここ数日で何度も謝られている気がしますけど、そんなに気にしているんですか? 僕との約束のこと」
「そりゃそうだ。会談を蹴られてしまって、約束を果たすための最善ルートは潰れてしまったからな。程度の差こそあれ、地
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