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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
75話:訃報と朗報
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あったのですが、軍人にならなければ、ローザス提督と知己になることもなかったでしょう。不本意な部分が無いとは言いませんが、主人公として精一杯歩んだ人生を、『不幸』と決めつけられてしまうのは、いささか悲しい気もします」

私なりに気の利いたことを言おうとしたが、どうも及第点はもらえなかったようだ。ただ、『そういう考え方もあるかもね』というと、ミリアム嬢は喪主の席へ戻っていった。弔問客の列に視線を向けると、俳優の様な男性が目についた。見覚えがあるが、あれは誰だっただろうか?記憶を辿っていると、後ろから肩を叩かれた。振り返ると

「ヤン、お前さんも参列に来ていたのか。歴史家志望だったお前さんに丁度よい任務だと思ったが、こんな終わり方になってしまってすまないな」

「キャゼルヌ先輩、いらしていたんですね。『ローザス提督の回顧録』は愛読書のひとつでしたし、この任務がなければ知己を得る事も無かったでしょう。もう少し色々とお話を伺いたかったですが、提督にとっては、先に旅立った730年マフィアの面々と、再会したい気持ちが強かったのかもしれません」

「そうか、ローザス提督に配慮してケーフェンヒラー男爵への返書をある程度踏み込んだものにしても良いという判断が、裏目に出たかもしれんな。それで?何を考えこんでいたんだ?」

ちょうど喪主のミリアム嬢と話している俳優のようだ男性が誰か考えていたと先輩に伝えると

「あれは中道派のトリューニヒト議員だな。売り出し中という意味ではお前さんと同じだが、その時々で支持されそうな政策を打ち出すので、他の派閥からは『カメレオン』だの『百面相』だのと言われているらしい。演説はうまいし、良く言えば機を見るに敏といった所だろうが、些か節操がないといった所だろうな」

「私の場合は、売り込んだつもりはないのですが......」

「先輩方、こちらにおられたんですね」

先輩と話をしていると士官学校の制服を着たアッテンボローが声をかけてきた。ローザス提督の葬儀は軍部葬だから士官学校生も動員されたようだ。講義をサボる大義名分が出来た事が嬉しいのか、ニコニコしている。

「アッテンボロー、お前さんも来ていたのか?最近の士官学校はどんな様子なんだ?」

「変わりありませんよ。良い奴と悪い奴が半々ってとこですね。それより俺にとって良くない知らせを耳にしましてね。あのドーソン教官がとうとう異動になるんですよ」

「候補生たちには朗報だろうに、なんで良くない知らせなんだ?」

「何を言っているんです。私も来年には任官です。任官先にドーソン教官がいたら私の軍歴は灰色のスタートですよ。頭の痛い話です......」

そんなキャゼルヌ先輩とアッテンボローのやり取りを観ていると、葬儀の場なのに思わず笑ってしまいそうになる
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